もしも猫が死なない生き物だったら
とある小説で猫に寿命があるのがおかしいって書いてあった。
猫ほどに優雅で優しく気ままで美しい生き物に老化や寿命があるんだから神なんていないんだ、要約するとそんなことが書いてあるお話だった。
たしかに猫好きの人からしたらそうかもしれない。人間にはさまざまな卑しい感情や邪悪さがあるけど、我々から見ればけなげで屈託なくかわいらしい生き物に対しても死を与えるだなんて神様は至極残酷じゃぁないか。そんな考えには共感できる。犬好きの人にとってそれは犬かもしれない。
ならもし、死なない猫がいたらどうだろう。あるいは死なない犬とか。なんでもいいんだけど。
とりあえず猫で考えてみよう。
猫が死なない生き物だったら。
基本的に、事故や病気がなければ猫は死なない、猫の寿命が"なし''の世界だったら。
まず 猫が自分よりも生きることを考えると、たやすく猫が飼えない。自分がいなくなっても面倒を見てくれる後継ぎがいないと猫を飼うことはとても無理だ。運良く後継ぎの子供がいたとして、その子供にまた子供ができるかなんてわからないし、少子化や生き方の多様化が進む古今、ずっとずっと猫を面倒みていける保証なんてどこにも、誰にもない。
人間より長生きな大きなカメとか動物園にいるし、組織で面倒を見ることができれば、飼うことはできるかもしれないけどね。でもずっとずっと、何百年も何千年もなんて、誰もなすすべがない。
そしたらだいたいの猫たちは野生で生息する世界だ。人間たちの手になんて追えないから、猫たちはみんな野生で自由に生きる。寿命がたかだか70-80年の人間共の世話になるわけにはいかない。それはたぶん猫たちがもっと神格化した世界だ。
猫たちは自分で寝床を用意するし、ごはんだって自分で確保する。自由気ままにお昼寝するし夜中に追いかけっこしまくって好き勝手に生きる。ずっと、一生、フォーエバー。
ずっとずっと生きてると、街や都市や田園や森の景色はぐんぐん変わって、新しく大きなものが建ったと思えば他方ではつぶされ、森が切り開かれたと思えば、廃墟と化した街を木々が侵食する。そんな時(トキ)のうつろいを、ただただ横目に、猫たちはマイペースに生きる。
ほんとにまったく、神様みたいな存在だ。
死なないっていうのは神様みたいってことかもしれない。超越的ってことだ。この世のほとんどのものが、生まれては、消える。そういう運命にある。樹木は長く生きるけど天災や虫食いなど、自然環境との関わり(あるいは人災)の中で生き続けることは難しい。死なないってことは、なかなかないんだ。わたしたちと、私たちのいるこの地球は死を抱えてまわってる。生まれて、死んで、生まれて、死んで、そうやってぐるぐるしてる。バランスを変えながら。
猫が死なない世界を想像したらそんなことを思った。別におちもないんだけど、そんなこと思った。
ところで、ロブスターには寿命がないらしい。
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