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◉昭和100年記念【名古屋・戦後意外史 その11】<「栄拡大」の起爆剤、中日ビルの誕生〜昭和41年4月26日>
●完成時の栄は…
名古屋栄のシンボル・2代目中日ビルは令和6年春に開業した。初代の中日ビルが誕生したのは昭和41年4月26日。今から半世紀以上前になる。名古屋タイムズの紙面から今はなき初代の威容と功績を振り返ってみよう。<>内は同紙の記事。
まずは、初代中日ビルがオープンしたころの名古屋栄はどんな様子だったのか確認したい。地下鉄は東山線が開通(名古屋~栄町~東山公園)していたが、名城線(2号線)は栄町~市役所のみ。栄の地下街も地下鉄駅に付随していた程度で、栄交差点直下の広場も丸栄(当時)に至るショッピングプロムナードもまだ、固い土に埋まっていた。エンゼルパーク地下駐車場もなかった。
地上では松坂屋、オリエンタル中村(現名古屋三越)は増築前。高層ビルの明治生命ビル(明治安田生命名古屋ビル)も姿を現していない。そんな栄に誕生したのが中日ビルだった。
●超デラックスビル出現
<デラックスずくめの「中日ビル」><中部随一 躍進名古屋の新名所>―。完工式を前にした同年4月24日、名タイの特集紙面に活字が躍った。
記事によれば、中日ビルは昭和38年11月に着工。2年5か月の歳月と75億円がつぎ込まれた。中部地方一、日本で5番目の大きさを誇る超デラックスビルだった。地上12階塔屋4階建てで屋上までの高さは41㍍。塔屋までが53㍍で名古屋城より約2㍍高かった。今でも印象的なのは、その渋い外観である。そこにはこんな秘密が。
<外観は、陽光にはえるブロンズ色。3階から12階にはめ込まれた1745枚の窓ガラスは、ブロンズ・ペインと呼ばれる窓ガラスの色が主調。厚さ8㍉と6㍉のガラス2枚が合わされ、この間12㍉が真空。ガラス自体が外部からのムダな光線を吸収してしまう。そして冷暖房効果満点。外側からビルを照らし出す蛍光灯が3500本もとりつけられ、夜はまさに“不夜城”>
中日ビル玄関は名古屋っ子にとって、待ち合わせ場所のひとつだった。訪れた人の目を奪ったのが玄関のモザイク天井画だった。縦10㍍、横20㍍、ベルギー産の大理石、ガラスモザイク11万個が使われた作品「大空の饗宴」。新幹線名古屋駅や愛知県西庁舎の壁画も手掛けた矢橋六郎氏の作品で、閉館時にも話題になった。
●名古屋3座のひとつ・中日劇場と名物・回転展望台
ビル内には文化センターや商店街などさまざまな施設がそろったが、中日ビルといえば中日劇場と屋上の回転レストラン。
同年5月に開場した中日劇場(7~12階)は7階が奈落で、8~12階が劇場。補助席を入れると約1700人が収容できた。9、10階のロビーには約1600万円かけた世界初の「光る壁」。透明のアクリル樹脂を張って、後ろの壁画を浮き出させるファンタジックな効果を狙ったものだった。大どんちょうは中村正義氏作の「昇竜」。竜が雲を蹴散らして天に昇る迫力満点の構図だった。
御園座、名鉄ホールに次ぐ、名古屋第3の大劇場。その誕生は「芸どころ」復活を期待させた。
<名古屋の劇界をみると、これまでは1か月興行を堅持してきた御園座が年間12本、いくぶん短期の流動企画を出してきた名鉄ホールが毎月2本だしたと計算しても年間24本、新劇関係の公演をのぞけば、どうあがいてみたところで最大限年36本の興行しか打てなかったのだから、ここにきて中日劇場が誕生したというのは、名古屋の演劇文化発展の可能性を作る窓口がもうひとつできたと期待できそう。とかく低迷ぎみといわれる芸どころにとって、これは大きな出来事>
屋上には日本風庭園と7㍍四方の池があった。池の中には「音と光の噴水」があって、赤、青、緑の灯と音楽で吹き上げる水を演出した。一方、回転展望台(スカイラウンジ)は直径22㍍で、1時間に1回転するレストランで、名古屋を一望しながら食事と喫茶が楽しめた。
地下2階~地上3階は「中日ビルタウン」で、東西のうまいものを集めた食堂街、専門店街が並んだ。
このネーミングが象徴するように、中日ビルは全体が一つの「街」を形づくり、栄に文化的色彩を持つ独特のタウンが出現したのである。中日ビルの誕生後、100㍍道路によって分断され発展を妨げられていた栄東を栄中心部に結びつけ、栄そのもののスケールを一気に東に拡大させた。ひとつのビルの出現が地域開発につながった典型的なケースであったことも忘れてはならない。
終
次回の名古屋・戦後意外史は
<名古屋に「日活ロマンポルノ」がやってきた~昭和46年12月1日>
お楽しみに
◉昭和100年記念【名古屋・戦後意外史 まとめ読み】🔽