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◉昭和100年記念【名古屋・戦後意外史 その6】<半世紀前は「エクソシスト」と「エマニエル夫人」の年だった~昭和49(1974)年>

●オカルトブームで中高生が殺到

半世紀前の昭和49(1974)年、映画界を席巻したのは「エクソシスト」と「エマニエル夫人」だった。
「エクソシスト」は少女に憑依した悪魔と神父が戦うウィリアム・フリードキン監督の米映画。名古屋では同年7月20日公開。当時、超常現象やUFOなど若者を中心にオカルトブームで、同月13日に一足早く公開した東京では一部映画館はけが人が出て、公開2日目には封切り中止となった。
名古屋では名古屋駅前のグランド劇場で公開したが前売り券が飛ぶように売れた。公開1週間前には6万枚。これは昭和47年公開の「ゴッドファーザー」の前売り2万枚をはるかにしのいだ。実際の観客は前売りの5倍は来るというのが当時の業界の常識。東京の事故もあって、恐れをなした配給元は前売り券の販売をストップした。
一方、東京の事故を受けて、警察庁が公開を控えた愛知や大阪などの警察本部に警戒を指示。グランド劇場を管内とする名古屋中村署は同劇場に「事故防止につとめるように」と指示した。名古屋タイムズの同年7月19日の記事によると―(以下、<>内は名タイ記事)。

<前売り券のすさまじい売れ行きに劇場側は、グランド劇場だけでは収容しきれないと系列のセントラル劇場でも、上映することに急ぎ決定。しかし両館の収容人量は1600人で、20日から夏休みに入るため混乱は必至>

 前売り販売中止後もグランド劇場の2台の電話は問い合わせので鳴りっぱなし。異常事態に鳥肌立てた劇場はあわてて①法定の定員制で入れ替え興行にする②混雑を和らげるために出入口を別にする③責任者は前日から泊まり込み、未明から雑踏整理にあたる④失神者続出も想定して看護師を待機させる――などの事故防止計画書を中村署に提出した。
そして当日、グランド劇場前には午前0時から高校生2人が並び、朝8時には中高生らが200m超の行列。劇場側と警官の計60人が警戒に当たる騒ぎとなった。肝心の反応だが、名タイによれば「映画としては面白かった」という声があった一方、「ぜーんぜん、怖くなかった。もっとすごーいと思っていたのに」と恐怖の前宣伝が効きすぎたのか期待外れぎみの女子中高生も。

●「ソフトポルノ」に女性もうっとり?

 シルビア・クリステル扮する外交官の若妻が主人公の仏ポルノ映画「エマニエル夫人」は同年12月21日に公開された。いわゆる正月映画で、この年は、ほかに「大地震」「エアポート75」「007黄金の銃を持つ男」など大作が並んだが、ふたを開けるとエマニエル夫人が独走した。
名古屋では名古屋駅前のスカラ座とメトロ劇場で封切られたが、翌22日の日曜日には両館ともに早朝から長蛇の列ができて、この日合わせて約1万人を動員した。
名タイは同月25日の記事で、これほどヒットした原因について、夏にパリで上映した際の前評判と「ソフトポルノ」と言われる映画の素材。そしてアラン・ドロンの映画「個人生活」と併映したためと分析。

<劇場の話では従来のポルノファンはもとより今回はふだんめったに映画を観ない中年の女性もかなりおり、また、アラン・ドロンにかこつけてやってきた若い女性会社員や学生も多いとのことで、ヌードを売り物にした映画にこれほど多くの女性がきたのは異例のことだという。「ハダカといっても画面が抜群にきれいですからね。その点にひかれてくるんでしょうね」と劇場側>

<映画館の中では身動きもできないほど。暖房はとめてあるが、それでも汗ばむほどの熱気だ。この映画がどれほど受けているかは、劇場が用意した2000枚のポスターがあっという間に売り切ったことでもわかる>


次回の名古屋・戦後意外史は
<全国初、長者町繊維問屋組合の「給食」と「地下街」~昭和29年、32年>
お楽しみに

◉昭和100年記念【名古屋・戦後意外史 まとめ読み】🔽

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