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花粉症で苦しむ日本人を救う「避粉ワーク」の第一人者に

起業家の卵のアイディアを伝えるメディア「名刺代わり」。第4弾は、花粉の舞っていない地域で働く「避粉(ひふん)ワーク」で起業を考えているくりっきーさん。

20年にもわたって花粉症に苦しめられてきたくりっきーさんは、仕事で訪れた沖縄で避粉ワークの魅力に取り憑かれたと言います。多くの日本人が苦しむ花粉症の問題を、どのように解決していくのか語ってもらいました。

花粉症対策と地域貢献を同時に

ーまずはくりっきーさんのアイディアを聞かせてください。

私が考えているのは、花粉症の方が安心して働ける「避粉ワーク」です。避粉という言葉は聞き慣れないと思いますが、夏の暑さを避ける避暑のように、花粉を避ける「避粉」は辞書にも載っています。

日本本島はどこも花粉が舞っていますが、離島や北海道の北部の中には杉やヒノキのない「避粉地」が存在しています。花粉症シーズンである2月中旬からGW手前まで、そのような避粉地で過ごすことで、花粉症に悩まずに仕事できる環境を整えたいと思っています。

ー人によっても症状は違うと思いますが、仕事ができないほど花粉症はひどいものなのでしょうか。

仰るとおり、一口に花粉症と言っても症状は人それぞれです。目や鼻がむずむずする程度の人もいれば、薬を飲まなければ日常生活もままならない人もいます。私自身は20年以上も花粉症に悩んでおり、最初はアレグラという最近市販薬としても取り扱いのある薬を処方されていました。しかし、症状の悪化に合わせて薬の強さも強くなり、今では効き目も眠気も最強のアレロックという薬を処方してもらっています。

日本は人口の40%が花粉症に罹患していると言われ、もはや国民病と言っても過言ではありません。政府も花粉症対策のために動き出しており、2023年から花粉症に関する関係閣僚会議がスタートしました。経産省も「健康経営優良法人認定制度」の評価項目に従業員の花粉曝露対策の追加を検討しています。もはや国や企業が本格的に対策しなければならない課題となっているのです。

ー具体的に、どのように避粉ワークを広げるのか聞かせてください。

現在は、避粉地の事業者の課題を避粉ワーカー(避粉ワークする人)が解決するモデルを考えています。避粉地に滞在することになるので、初期ユーザーはデジタルノマドと言われる、エンジニア・デザイナー・Webライターなどが中心です。

一方で避粉地の事業者の多くはデジタル人材不足。花粉症のデジタルノマド人材が避粉地の事業者の課題を解決するモデルを作ることで、避粉と同時に地域課題の解決にも取り組んでいきたいと思っています。

単に「避粉地で仕事をする」だけでなく、地域の課題を解決することで、やりがいも感じてもらえたら嬉しいですね。将来的には、企業を巻き込んで避粉ワークをパッケージとして副業や福利厚生として導入していければとも考えています。


避粉ワークが広がらなかった理由を解決していく

ー避粉ワークで起業しようと思ったきっかけを聞かせてください。

たまたま仕事で沖縄に行った際に、薬なしで生活できた経験が衝撃的だったからです。これまでの人生、ずっと花粉に苦しめられてきたので、誰かのために仕事をするなら、同じように花粉症に苦しむ人のために起業したいと思って。もっと多くの人に避粉ワークを知ってもらいたいと思い、本格的に起業を考えるようになりました。

花粉症の苦しみから開放された沖縄の地

また、同時に地方の課題も解決したいと思ったのも大きな理由です。地方には魅力的な観光地や特産品などが数多く眠っていますが、売り出し方が分からずに悩んでいる自治体も少なくありません。都会で働く優秀な人材をマッチングすることで、それらの課題を解決できれば両者にとってWin-Winな関係を築けると思いました。

ーなぜ、これまで避粉ワークが広がらなかったのでしょうか?

花粉症の方約20名にインタビューして分かったのが、そもそも8割くらいの方が日本に避粉地が存在するのを知らないということです。

避粉ワークを打ち出している宿泊施設やコワーキングスペースもあるのですが、避粉ワークだけにリソースを割くわけにもいかないのだと思います。シーズンが限られる上に、どれだけ集客できるか未知数で、リソースを割き切れないのではないかと。また、避粉ワークの存在を知っても、経済的な理由で断念する方も多いと思います。

加えて、家族や会社の理解を得るのも大きな壁です。特に上司が軽い花粉症の場合「俺だって我慢して働いているんだから」と反対されるケースもあるでしょう。人によって症状の重さが違うため、苦しみを理解してもらうのが難しいようです。

それらの問題も「地域の課題を解決しにいく」という理由をつけることで、正当化できるのではないかと考えています。

ー今後、どのように事業を広めていくのか教えてください。

まずは自分で沖縄に避粉ワークをしながら、その様子を発信し、地元の人たちと関係性を構築していきたいと思います。それと同時に「離島地域の事業者の課題をAIで解決しよう」というコンセプトのオンラインワークショップを開き、参加者の方からアイディアを出してもらいます。

ワークショップで出たアイディアを、私が地元の人達に伝えてプロジェクト化していければと思います。プロジェクトになれば、現地に赴く人も増えると思うので、自然と避粉ワークが広がっていけば嬉しいですね。

ー避粉ワークだけだと時期が限られますが、他の季節で考えているアイディアはありますか?

私が将来的に目指すのは「地理的制約からの解放」です。四季のある日本では、様々な季節性の症状に苦しみながらも周りに理解してもらえず、辛い思いをしつつも半ば諦め、生産性を落としながら働いている方が少なくありません。

たとえば春は花粉症患者が3,000万人、夏は多汗症患者が500万人、冬は過敏性腸症候群患者が1,500万人いると言われています。これらを地理的移動により解決し、自身の体質に合った土地で働く価値観を広げ、日本の労働生産性向上を実現したいです。

また現在世界でも4人~5人に1人が花粉症と言われており、アメリカではブタクサ、ヨーロッパではイネ科の花粉症が社会問題となっています。私が産まれた1990年から、日本は失われた30年と言われ、まもなく35年になろうとしています。長年労働生産性の低下が嘆かれ解決の糸口は見えていません。

本サービスによる「地理的制約からの解放」の事業モデルをグローバルへ展開し、日本の働き方が世界から称賛され、日本ブランドをより美しく、強固なものにしていくことが私の夢です。

プロフィール
2015年に名古屋大学 大学院情報科学研究科を卒業しKDDIへ入社。2019年に沖縄DX拠点の立ち上げに参画し、拠点開設後は沖縄へ移住。拠点統括として、県内の法人・自治体向けの地域DXプロジェクト推進を4年間担当。沖縄移住後は15年以上苦しめられた花粉症の症状が全く出ず、避粉ワークの素晴らしさに気付く。現在はITフリーランスのプロジェクトマネージャーとして活動する傍ら、避粉ワーク事業の立ち上げ中。

避粉ワークに興味のある方は、くりっきーさんのSNSまで


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