私の学級通信 第4回「自ら学ぶ事は人生を豊かにする」
佐藤文哉先生(東京都内特別支援学校 勤務)
明星大学通信制大学院 博士前期課程修了
「私の学級通信」について
明星通信で学ばれたOBOGの方が、教育現場でどのような活動や取り組みをされているかや、明星通信でどのような事を学ばれて活かしているなど幅広く紹介する企画です。
今回は、”生徒との出会いと別れ”をきっかけに研究をしようと、明星大学通信制大学院に入学された先生のエピソードです。
仕事と大学院両立した理由
都内の特別支援学校に勤務しています。もう10年ほど働いています。大学院で学ぶきっかけは、自分の担当した生徒が亡くなったことから始まりました。
特別支援学校は子どもたちのできることを生かして社会生活が送れるように教育を行う場です。教育活動を通して子どもたちの生活を豊かにすることが教師の本分でありますが、日本の特別支援教育は、「個別の教育支援計画」を作成し、医療、労働、福祉等の機関と連携を図る役割もあります。生徒の死を通じて、家庭、医療、デイサービスなどと連携し、現在の体調を把握したり、学校では見られない子どもの一面やこれまでの育ちを知ったりなど、それぞれの機関が共通した認識を持って支援できていれば、状況は違っていたのではないかと感じました。
この感情をどのように向き合ったら良いか考えました。はじめは学習会に参加しながら学ぶこともできると思いましたが、この頃はコロナウィルス感染症が流行しており、対面で学ぶことが困難時期だったので困難と考えました。次に大学院を考えました。教師の場合は、教職大学院もあります。給与も支給されながら学ぶ制度もありますが、募集定員が決められていること、出願までに各大学院の研究室について知る準備ができないことがネックでした。
同時期に明星大学通信制大学院の障害児者研究領域の教授を勤められる星山麻木先生のオンライン研修に参加しました(私は、明星大学の通学課程で教育学を学び、星山先生にはその頃より大変お世話になり、その御縁もあり学習会にも時折参加していました)。
研修会の中で、米国では障害のある方や家族に対して早期介入支援が実施され、さまざまな機関が連携し、重層的な支援が行われていることを知りました。星山先生自身もアメリカやオーストラリアに滞在し、個別の教育支援計画(IEP)をはじめ介入方法、支援のデザインに高い見識をお持ちです。通信制大学院ということで、スクーリング以外は書籍と向き合い考えをまとめる自主学習が主体となりますが、先生の下で再び学び研究を積み、論文にして考えをまとめ上げることが今後の教師生活を豊かにするのではないかと考え、明星大学通信制大学院を受験することにしました。
働きながら学習をする日々
通信制大学院には、2年間在籍していました。この期間は人生を振り返る中で一番大変な時期だったです。やはり、働きながら卒業を目指すため勉強時間の確保が重要でした。週の中で大学院の学習をする日と決めた日は、残業は抑えて退勤しレポート、修士論文の作成に時間を当てました。私の場合は職場まで電車を使って移動していたので、車内ではレポート課題の本や先行研究を読むなどできることを行いました。
特に私の場合は、文章をまとめることが大変苦手で、読むのも時間がかかりました。平日は長くて3時間、休日は6時間ほど学習をしていたと思います。仕事と学業の両立は大変でしたが、研究分野の歴史だったり、理論と実践が繋がりを感じられたり充実した日々でした。そう自分を突き動かしたのは、同期入学の仲間たちの存在です。同じ星山先生の下で学ぶ仲間が一番身近な存在で学習の支えになりました。また同期入学の仲間もと連絡を取り合い、学習や研究について語り合いました。対面でのスクーリングがある時は、3日間ずっと一緒にいますので食事をしたりして様々な話をしました。お互い一人で頑張る時間が長いですから、一緒に頑張って卒業しようと励まし合いました。それが、知りたいと思う気持ちに一層エンジンがかかって自分を突き動かしました。
一方で、休むときは休むと決めて、メリハリをつけました。特にスクーリングやレポートを書き終えた後、修士論文の調査が進んだ時、行き詰まった時は、一度リフレッシュを入れました。私は、山登りや旅行が好きなので出かけました。都心から離れ、山の中で自然と触れ合うことで気持ちを回復して再び頑張れました。
修士論文を通じて
大学院の集大成は、修士論文です。修士論文では、自らの体験から家庭、医療、デイサービスなど関係機関との連携の大切さについて書きました。私の場合は、インタビューをとって、分析する質的研究を行いました。これまでインタビューする経験が少なく、大変緊張しながら行いました。インタビューは、調査協力者に対して同じ内容を聞くのですが、その人の一番大切なことがすんなり出てくる人もいれば、対話を重ねる中で出てくることもあって聞きたいことを話してもらうことは本当に難しいなと思いました。一人一人に間合い、タイミングがあること、信頼感、話しても大丈夫という安心感など日々の学校生活でも活かせることを学べたと感じます。
分析、考察をまとめる時は、どのようにまとめたら良いか悩む日々が続きました。手を動かすことに夢中になっていると朝だった…こともありました。しかし一本の筋が見えると論文作成が進んだ嬉しさだけでなく、日常生活の見え方も変わってきて自分の中のスタンスが作られ、新しい自分になっていく感じがありました。
在学中は、仕事、家庭と両立させながら学習をするため忙しい日々でした。忙しい日々でしたが、実りの多い時間でした。修士論文で得られた子どもを取り巻くネットワークと繋がり調整することは子ども、保護者、関係機関と関わる時に意識して取り組んでいます。また、授業づくりや校務の場面では、根拠や先行研究に目を通して、自校ではどうしたら良いか考えて行動するになったかと思います。学びに終わりはない。学びで得られたことを大切に生きています。
最後に、大学院では自ら学ぶことは人生を豊かにしてくれると強く感じさせてくれました。今、自分で研究を起こして修士論文として完成させること、学校や会社などの組織の中ではなかなか難しいです。
明星大学通信制大学院は、一人一人の研究を受け止め、共に考えてくれる温かな場です。何か研究に通ずる課題を持っている方、心に秘めておかないで是非、追究してみてください。今現在、在学されている方、毎日本当にお疲れ様です。辞めたいと思う日もあると思いますが、ひとつ山を超えると見える世界が変わります。自分のペースで前に進んでください。
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