AI vs 司法書士
こんにちは、明成法務司法書士法人の代表 髙橋遼太です。
-AIは司法書士にとって脅威になり得るのか?-
こういった質問は、この数年でよく聞かれるようになりました。おそらく、司法書士という業種に限らず、様々な職種において、AIに取って代わられる業務は事実存在し、職を失う人もでてくるのでしょう。
このトピックについて話し始めるとキリがなくなってしまうので、今回も「司法書士として」「経営者として」の視点からの考えを書きたいと思います。
■AI時代において、先生は司法書士の活躍の場に影響があると考えているか。
率直に、AIの台頭を脅威に感じている部分はあります。
AIがオフィスワークの現場で活躍できることを考えると、司法書士の仕事もAIに取って代わられ易いと思えるかもしれませんね。
表面的だけ捉えれば、とても脅威に感じる面もありつつ、私たちの仕事は資格を持っている「独占業務」でもあるわけです。
私たちの仕事は、絶対に間違えられない人の財産を扱う仕事なのですが、仮にAIに依頼して、AIが仕事をした結果、AIが間違えを犯した時にAIには責任が取れるのか。
そう考えると、日本という法治国家の中では責任が取れる人間しか司法書士の仕事は務まらないのではないか、と思うのです。
逆に絵画や音楽といったクリエイティブ活動等は答えがないもの。こういった答えがないものほどAIに取って代わられるんじゃないかと考えてしまいますね。
答えに正誤があり、間違えられないものに関しては、AIが責任を取れるようにならない限り、国家資格を有する仕事に関しては一定のアドバンテージがあるのではないでしょうか。
将来的に、AIを事業に導入・活用していくことに対してどう考えるか
AIの台頭にはプラスとマイナスの両軸があると思っています。
脅威に感じる面がありつつ、AIが出てきているという現実があるので、それを踏まえてうまく利用していくことを考えることが大事だと思います。
人類が初めてする局面なわけですから、私もどうなるのか予測がつかない。ただ、急に今日明日で世界がAI一色になるわけではないので、変化を敏感に察知しながら、そこに適応していく、というのが今のところの答えですね。
■自社でAIを取り入れるとしたらどういった局面で取り入れたいか
やっぱり書類のチェックかな。
もちろん最終的には人間の確認が必要だと考えますが、8割型AIでチェックができると、業務もすごく捗ると思っていますよ。
■AI時代における司法書士業界をどのように考えるか
私は技術者ではないので、AIのテクニカル的なことや、どう使いこなせばいいかについては語れないのですが。AIがどう影響するかについて考える前に、日本の経済情勢から考える必要があると思っています。
日本はこの30年間近くデフレの時代でしたよね。つまり、30歳の時に開業した人が、今は60歳の経営者ということです。この人たちは、インフレ下の経営をしたことがないわけです。
「お金を持っていれば、来年価値が上がる」という状態で経営してきた人たちにとって、「お金の価値が下がる」インフレ下においての経営経験が未経験になりますよね。
私は創業して15年目に入ります。
ちょうどアベノミクス政策が始まり、インフレという正常な経済環境を作っていきましょう!というのが打ち出された時期。
もちろん、世の中すぐに変わるわけではないので、インフレに変わっていくのかな?という動きを感じながら経営をしてきたデフレ後期の経営者にあたります。
AIうんぬんの前に、これからインフレ下で経営(仕事)をしていかなければならないという課題を感じています。
■ AIとインフレどう関係するのか
デフレ下では給与が下がる、または現状維持で良かったのが、インフレ下では人手が不足するので、当然給与が上がり、人件費がかさみますよね。となると、提供サービスに価格転嫁をしていく情勢化になっていくというのは当然のこととして考えられます。
しかし、30年近く価格転嫁を経験してこなかった国民が「価格が上がる」ということを受け入れる素養がない中で、やっていかなければいけない。
本来、人手が不足すれば、人件費が上がるわけですが、AIの台頭によって、人がいらなくなる部分が出てきます。そのため、人件費が上がり続けることが絶対なのだろうか?といった疑問もあります。
インフレ、デフレ時代の経験があっても、そこにAIの台頭というのは人類が初めて直面する局面なんです。従来の公式が当てはまらない、この時代をどのように乗り越えていくかを経営者として真剣に考えていかなければならないと思っています。
■これまでの公式が当てはまらない時代において、自身が気をつけなければならないこととは。
今まではお金を持っていたら、翌年価値が上がっていたのに、今後はお金の価値が毎年下がっていくという時代になり、金融機関の目線としても内部留保のある会社が必ずしも良い、という目線は変わってくると思います。となると、投資・金融資産のポートフォリオも変えていかないといけない企業経営になっていきますよね。
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