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1995年のバックパッカー#46 インドネシアーシンガポール ウブドの芸術とそれにまつわるエトセトラ。
9月29日(火曜日)
今日は美術館巡りをすることにした。
自転車をレンタルして、ネッカ・ミュージアム、ミュージアム・プリ・ルキサナを訪れた。
噂に聞く芸術の村、果たしていかに?といった好奇心が推進力となって、自転車のペダルをぐんぐん押すのだが、あいにくウブドは急坂が多く、ただの自転車移動が、熱帯での有酸素トレーニングのようになっていった。全身汗だくである。それでも登り坂のあとの下り坂は、快適ですこぶる爽快だった。
熱帯の坂を、ブレーキレバーを握らずに滑り降りゆく時間は、天国へと飛び立つ滑走路を思わせた。それは快適の一語を快楽と差し替えても問題ない。
僕は、自転車で坂を下る時の、散歩にはないその風に魅せられて、移動そのものが目的であったように楽しくなっていった。風はいい。とてもいい。
植物が生きるには、光と水、そして風が必要だという。
おそらく、動物にも、人間にも風は必要だろう。バリの坂道を自転車で下るたびに、その速度と風にうっとりした。下った先には天使のハグが待っているような、そんな重力との遊びだった。
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