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1995年のバックパッカー#40 タイ6 カオサン、シーロムスクエア、パッポン、3つのタトゥ。


8月は終わった。そして新しい9月が始まり、その最初の日は金曜日だった。

僕は8月8日の生まれで、このゾロ目をとても気に入っていた。その流れで誕生月にも思い入れがあった。その思いが強い分、9月になるだけで感傷的になりやすい。自分の季節が去ったような気になる。

ノーン・カーイから僕を乗せた夜行列車は、早朝にバンコクのホアランポーン駅へと滑り込むはずだった。僕はそのつもりで夜明けごろに寝ぼけながらカーテンを開けて、そろそろバンコクだろうと外を眺めた。だが、そこは大都市とは程遠い田園風景が広がっていた。そうか、到着が遅れているのかと納得し、ならば急ぐ必要もないので、少しずつゆったりと身支度を整えた。
いつでも降車できる準備を済ませ、ぼんやりと外を眺めていると、窓ガラスを激しく叩く雨滴が、銃弾を連想させた。戦場の最前線を銃弾の雨を避けながら、どうにか駆け抜けていく。そんな想像を今までしたこともなかったので、そんな過去を実際に持つ霊が車内にいるのかと、これもまた普段と違う想像をした。

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