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駐在の怖い話 夏ver.

駐在妻になることで、人間関係にふるいがかけられたようなことを以前書いた。

似たような話になるが、夏が来ると思い出すのが「日本からの駐在家庭襲撃事件」。

漢字を並べて仰々しく言ってみたが、要は「駐在家庭、無料のホテル扱いされがちな件」である。
「駐在(帯同)をしていなかったら、この人が無神経だとは気づかなかったかも/感覚が合わないとは気づかなかったかも」という現象が起きた自分や周りの日本人の体験談をまとめてみた。

来てくれるのは嬉しいけども

遠い日本からわざわざ駐在先に来てくれるのはとても嬉しい。
久しぶりに会って話したい。なんなら遊びに行きたい。
こちらで見つけたおすすめの観光場所もレストランも連れていきたい。

でもそれはごく親しい身内や友人に対してのみ発想することだ。

そこまで親しいと思っていなかった相手や、最初からこちらの家を宿としてあてにされていたら、そこまで思えない。

「泊まってもいい?」という来訪者

「泊めてくれるだけでいいから」と言われても、実際相手が宿にしようとしているのは、普段私たちが素の自分をさらけ出して暮らしている『我が家』だ。
親しくないなら尚更、掃除や準備がいるしくつろげない。夫婦どちらかだけの知り合いなら、気まずさはさらに増す。

「泊まるだけ」と言っても、家に他人が1人増えるだけでやることは増えるのだ。
部屋も片付けないといけないし、食事も家族分だけ用意したら気まずいだろう。郊外なら車が無いと何もできないから「いつのまにか運転手になっていた」という話も聞いた。
さらに、現地語のできない来訪者のために、通訳も担ったという体験談もある。

ケチな我が家の対策

こうした話を聞いて、他者に対して心が狭い私がとった対策は、まず余分な寝具を持たないことだった。
たいていの「泊めて」というおねだりには「ごめん布団もソファも無いんだ」がよく効いた。

実際、貧乏駐在家庭にとってアメリカで過剰に寝具を持つことは経済的に負担であった。
他の地域や国の物価は知らないが、私の住んでいたところではIKEAの薄っぺらいシングルマットレスでも数十ドルした。同じ値段をかけるならHoliday Innに泊まってもらった方がお互いの精神衛生上にもずっと良い。もちろんお代は泊まる人自身です。

VSええかっこしいの夫

最初の頃、人が来る話を聞くと夫が「来るなら布団買わないとな」と寝言を言っていた。
見栄っ張りのわりに性根はケチなので寝具の値段を見たら黙った。

夫を含め、こうした時につい「何でもやってあげるよ!」と身銭を切れる人の気持ちは私はわからない。
動かせる金には限度があるし、図々しい人に恩を売ったところで返ってくるのは自己犠牲を美化した自己陶酔だけだ。
見栄で腹は膨れないし、同じ金を使うなら自分の子供に使いたい。

我が家の結果

こんなケチな対策を取り続けていたが、図々しい人とはそれで縁が切れていった。

それでも泊まってホテルを浮かせて行った人は2件、ある知人と自分の兄弟だった。
知人の方は寝袋持参で来た。話してみると良い人で、気づけば快く世話を焼いていた。
自分の兄弟も布団事情を承知の上で押しかけてきた。滞在中の世話のお代として、日本からの物資と子守を任せた。

駐在帯同生活をしてみて、初めて「ただ外国に住んでいるだけの普通の家庭」に対して「無料で泊めて・食事の世話をして・案内して・運転して・通訳して」と要求する人がいることを知った。
そして、必ずしもその要求に応える必要がないことも学んだ。むしろこちらも条件を出した方が良いかもしれない。

駐在関連で、また日本での人間関係がふるいにかけられてしまったと思う出来事だった。


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