駐在妻の悩み ② 日本人村
駐在妻だった頃の悩み。
2つ目:日本人コミュニティが相互監視の社会に思えてならなかったこと。
日本人が特に多い郊外エリアに住んでいた時のこと
日本人が活動できる治安レベルの地域が決まっていることから、住む場所も外出先も日本人だらけだった。
子供連れの人も多く、公園に行けば、近い月齢の子持ちの日本人と知り合えるほどに日本人がいた。
もちろん、アメリカなので日本人以外の人もいたが、渡米したては「アメリカでの日本人らしい育児ができるか」に関しての情報を求めたり、自分と同じ境遇の人と話したくて、日本人といることが多かった。
また、日本人以外のママ友は、日々のスケジュールが一定でなかった特徴も大きい。
日本人ママは、他の国出身のママと比べると、はるかに規則正しい生活を送るのだ。例え本人が自称ズボラでも。
要は、日本人なら子どもを毎日同じような時間に散歩に連れ出していたので、遭いやすかったのだ。
煮詰まってきた
毎日毎日顔を突き合わせていれば、あっという間にお互いのことに詳しくなる。自分から話すタイプの人もいたし、積極的に聞いてくる人、他の人のことを教えてくれる人もいた。
公園以外の出かけ先、配偶者の勤務先も同じだったりして、どんどんお互いの家、車、生活習慣も把握していく。
近所を歩いているだけで、嫌でも知り合いの家が目に入り込んでくるくらい
「お互い日本人同士」というだけで知り合った人が住んでいる。
この日本人というだけでなんとなく仲間意識を持つ上に、近所に住んでそれぞれの生活が丸わかりな生活が、私はストレスに感じるようになっていった。
アメリカの広大な大地と広い空の下に住んでいるのに抱く、日本人コミュニティへの閉塞感。
これを地方出身の日本の友人に愚痴ったら「うちの村みたい」と言われたので、以来色々と密度が濃い日本人コミュニティを日本人村と呼ぶようになった。
他所の日本人家庭をチェックする奥様
日本人村生活で印象に残っていることがある。
それまで他所の家庭を気にするような性格ではなかった人が「あそこのお宅、最近決まった時間に車でお出かけしてるみたいだけど習い事でも始めたのかしら」と言った。
・他所の車を把握している
・毎朝、他所の駐在家庭の駐車場をチェックしている
・本人に聞けばわかることを習い事に限定して結びつける
・本人に聞けば良いことを私に言う感覚
ささいなことだが、私には衝撃的だった。
この人には見られていないかもしれないが、同じように私も誰かに見られて、そしてそれを会話のネタにされていることもあり得ると気がついたのだ。
迷走する私(遅れてきた大2病、もしくは「駐2病」)
私は急に近所の日本人が怖くなり、子供を外遊びさせる時間をずらしてみたり、場所を変えてみたりした。その結果、それも日本人同士の間で噂になった。
次第に私はストレスを「他の日本人を下に見ること」で発散し、性格が悪くなっていった。海外で日本人同士でつるむ人を揶揄するようなネットの記事を楽しく読んでは鬱憤を晴らしていた。
そしてある時ふと気がついた。みんな同じ論調なのだ。
海外に住んでも日本人同士で集まる人の描写、そこから離れて自己研鑽する姿の裏に見える上から目線。
「他人と違う私」の発想が、すでにもうよくある同じものなのだ。
「私は他の一般的な奥様とは違いますから」という、他の人と同じようなことを言っている時点でだいぶ無個性になっている。
私もネットの向こうの人も、1番他の奥様と似たりよったりだ。これ以上他人を見下していると、自分がますます馬鹿に見える気がして止めた。
閉鎖的な空間で、無自覚におかしくなっていた。
それに気がついた時には、日本人村での生活は終わりが見えていた。