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在外邦人あるある?
駐在帯同生活をしている間、周囲が日本語わからないと思ってるのか、時々すごい会話をしている日本人に遭遇したことがあった。
ご本人たちにとっても、聞き耳を立てていた私にとっても恥ずかしい思い出になるかもしれないが、どうしても忘れられない人達がいたのでここに書こうと思う。
公共の場で家族計画の話
公共交通機関でわりと遭遇したが、遭遇しすぎて日本でも大っぴらに話す内容だったような気がしてきていた。
日本語でヤベーこと話している奴がいるな…とチラ見したらの人が知り合いだったケースもあり、そんな時は必死で気配を消して他人を装った。
しかしどうしても聞こえてくるものは聞こえてくるので、私はいつの間にか近所の日本人の家族計画に詳しくなっていた。Excelを使って計画を立てているという話が入ってきたときは思わず感嘆の声をあげそうになったのを覚えている。
ママ友トーク
日本では周囲の声なんて気にしたことはなかったが、アメリカに来てからは日々飛び交う言語の中から日本語だけを敏感に拾ってしまうことがよくあった。日本語に飢えていたのかもしれない。
そんな感じで日本語耳がダンボになっていた私は、ある時日本人ママグループの会話を拾った。
最初はたわいない育児の話だったが、
「そういえばあなた何歳!?」といきなりママ自身の年齢の話になっていた。
年若いママには「わかーい!」と微笑ましい反応が出ていたが、ある年下のママさんがそのグループ最高齢のママさんの年齢を聞いた時、
「えー!!高齢出産間近じゃん!早く2人目産まないとね!」
というコメントをした。
それが耳に入った瞬間色々な思考が私の中を駆け巡り、喉の奥から絞り出すような空気が出そうになった。それまで非日本人のふりをして顔を伏せていたが、思わず年嵩のママさんを見てしまった。
彼女の一瞬の真顔と、その後の取り繕うような微笑が忘れられない。
海外に行くと、時折性格が(開放的な方面に)変わる人がいるというが、この若いママも太平洋を飛び越えた時にネジが緩んでしまったのかもしれない。
彼女は日本でもママの年齢に一言つけて回ってるのだろうか
だとしたら、やはり海外では良くも悪くも日本では出会わなかったような日本人に出会うと思った。
クルーズ船の中で
もう一つ、未だに覚えているのは美しい景色を望みながら進むクルーズ船内でのこと。
ふとした拍子に隣の席の人が読んでいる本の中身が目に入った。
それが日本語だと気づいた瞬間、同じ船内で同胞を見つけた気分で嬉しくなりつつも、久しぶりの日本語の活字に思わず目のピントを合わせてしまった。
濡れ場のシーンだった。
その後日本人じゃないふりをして過ごした。ここに至るまで5秒くらいだった。
言い訳しておくが、私は官能小説を大して読んだことは無い。思春期の頃にパラパラしてみたくらいの健全さをもって接した程度である。しかしその程度の知識でも判別できるほどの直接的な描写だった。
アメリカの雄大な自然を見ながら濡れ場を読む猛者がいることは私にとって大きな衝撃だった。
海外に行くと、日本語は日本語話者にしか通じない暗号のような面もできると思う。
どうせ周りの人には言ってること、読んでいるものが分からないだろうと思って、話選びの基準が甘くなるのかもしれない。
しかし、日本人に見えない日本人や、日本語に堪能な外国人もたくさんいる。
海外で、日本語が基本的に通じないからといって何を話したり見たりしても良いわけではないな…と感じた出来事だった。