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わたしにも夢があった

noteに書いてみてはじめて思い出したことがある。

この文章は、わたしが10年前の2009年3月から一年間、中国に留学していた頃の回顧エッセイです。毎週火曜19時に更新しています。

中国の授業は、文法・リスニング・長文読解など種類があるのだけど、日本人にとって一番得意なのは長文読解の授業だ。

なぜなら漢字をみれば大体の意味が分かるから!これは日本人の特権で、太古の昔に中国大陸から漢字を日本に持ってきてくれた先人たちに大いに感謝しなければならない。ありがとう漢字。今日まで日本に残ってくれて。

まあその代わり文法やリスニングはさっぱりで、aとpplにe が並んで初めてリンゴの意味を持つアルファベットの不思議に耐えられず英語をあきらめて中国語を専攻したわたしからすると、外国語と母語の関係って上達するためには重要だなと改めて思う。

その長文読解の授業の中で一番印象に残っているのは『三毛(サンマオ)』という女性の話だ。三毛は1943年台湾の作家で、大学を卒業後スペイン・ドイツ・アメリカと移住後、ドイツ人と婚約するがその彼を心臓発作で亡くしてしまう。そのショックから逃れるためにスペインへ戻り、後に恋人と旧スペイン領のサハラに移住する。その時の生活を描いたのが『撒哈拉的故事』(『サハラ物語』)。

移住する前に持ってきた常備薬を分け与えていたらいつの間にか村の医者ということになっていた話。そのほか11編の波乱万丈なサハラでの生活を独特の文体で描く彼女の文章は中国・台湾・香港の女性の間でヒットして三毛フィーバーを起こしたほど。

しかし彼女は1991年に47歳という若さでこの世を去っている。バスルームでストッキングを使って自死したということになっているが、その状況や彼女の性格から自ら死を選ぶのかなど疑問も多く、真相については不明な点も多いということを先生が教えてくれた。

ますます興味を持って三毛全集の中の『撒哈拉的故事』は中国の書店で購入した。表紙が可愛いのもあって、今も自宅の本棚の片隅に並んでいる。中国に行く機会を作ってほかの本も集めたい。

そんな中華圏の女性に大人気の三毛、『ダーリンは外国人』やよしもとばななさんのエッセイのような雰囲気で日本でも受け入れられそうだけれど、日本語に翻訳されているのは1冊だけ。中国語専攻していても、留学しなかったら知ることはできなかっただろうな。

そう。noteに書いてみて初めて、いつか三毛の本を翻訳してみたいとささやかな夢を持っていたことを思い出した。

いつか中国語がもっと上達したら、いつか文章がもっとうまくなったら、いつかそんな機会があれば、そう思っていたけれど、いつかっていつだろう?

久しぶりに読み返してみようかな。




なんとか生きていけます。