再生処理の現場 vol.11(前編) デジタル化と自動化による、安全で働きやすい材料部の実現 東京医科歯科大学病院「C棟」材料部 フォトレポート
再生処理の現場に立つ、さまざまな方の声を届ける「再生処理の現場」。vol.11の今回は、シリーズの番外編として、2023年10月にオープンした東京医科歯科大学病院の「C棟」に移転された、あたらしい材料部について取材させていただきました。 移転にともない、材料部の大幅なリニューアルとアップデートがおこなわれた同大学では、将来的な再生処理業務の自動化を見据え、洗浄・組立エリアにロボットが導入されています。前編となる本記事では、同大学の材料部部長を務める久保田英雄先生に、あたらしい材料部内の設備と医療機器のトレーサビリティシステムについてご案内いただいた内容を、豊富な写真とともにレポートしていきます。
再生処理の情報を記録するトレーサビリティシステム
本シリーズのvol.1にもご登場いただいた、東京医科歯科大学病院の久保田先生は、2009年から院内の医療機器を管理するトレーサビリティシステムの開発と導入を推進されてきました。C棟での材料部の新設に際しては、オペレーションの見直しと同時にさらなるシステムのアップデートが行なわれたといいます。
「トレーサビリティシステム導入の目的は、まずは医療の安全のためであり、1本1本の医療機器がいつどのように洗浄・滅菌されたのかを記録し、品質管理をおこなうためにあります。2009年の導入以前もアナログの用紙で記録していましたが、誰でも記録ができて、いつでも簡単に確認できるデジタルの仕組みを構築しました。運用をはじめてもう15年になり、いろんな成果が出てきていると思います」
東京医科歯科大学病院で使用されるほぼすべての医療機器には、「GS1 DataMatrix型」の2次元シンボルが刻印されており、材料部内の洗浄・組み立て・包装・滅菌の工程ごとに、2次元シンボルを読み取るための機器が設置されています。材料部のスタッフの方々が各プロセスで2次元シンボルの読み取り作業をおこなうことで、再生処理の進捗が材料部内のモニターに投射され、完了までのすべて情報が記録されます。
洗浄エリアのスタッフはまず、外来病棟から回収されてきた使用済みの器材の「返却登録」をおこないます。病棟では返却の際に使用機器のリストを登録したQRコードを添付するため、洗浄エリアにて情報を読み取り、リストの内容とずれがないか確認することで、器材の紛失を防ぐことができます。
一方手術室では、医療機器の入ったコンテナ、滅菌バッグなどのQRコードをハンディリーダーで読み取り、使用履歴を登録をしています。材料部に器材を返却する際には、手術室内で登録情報と内容が一致しているかを確認するため、万が一器材の紛失が発生した際にも、すぐに事態に気づくことができます。
返却登録が済んだ器材は、洗い場にて用手洗浄や浸漬洗浄された後、洗浄器に運ぶためのラックに載せられます。このラックには「RFID」タグが組み込まれており、洗浄器がタグを読み取ることでプログラムが稼働し、器材ごとの洗浄情報が登録されていきます。なお、器材の多くはウォッシャーディスインフェクターにてアルカリ高温洗浄がおこなわれますが、種類によって中性洗剤を使用する場合や、超音波洗浄器、減圧沸騰式洗浄器を使用する場合もあり、いずれの洗浄情報もシステムに登録されます。
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