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4. すべてがFになる〜自分は本当にひとつなのか〜


久しぶりの投稿になってしまいましたが、読書記録をひとつ。
すべてがFになるを1作品目として人気を博したS&Mシリーズ、1作目は既読の方も多いのではないでしょうか?
ここ最近転職や実習で忙しかった私ですが、それらが落ち着いてからというもの読書三昧の日々です♩
このS&Mシリーズは7月から読み始めてちょうど1ヶ月で読了しましたが、これがまた、面白い!

某N大の建築学科2年生である西之園萌絵と同じくN大の助教授・犀川創平がいくつもの密室殺人の謎を解き明かしていくというあらすじです。
詳しいことはまた調べてみてくださいね𓈒𓂂𓏸

私がここで書き記していきたいのはありのまま、生の感情たちです、!もし読んだことがある方は共感したり、もしくは比較して意見を呟いてみたりしてくださいね♩


実は私、『すべてがFになる』の冒頭では西之園萌絵というキャラクターがあまり好きになれないでいました。類稀なる演算能力を持つ生粋のお嬢様で頭脳明晰・眉目秀麗だが、わがままで短気な面も目立ち、ヒステリーな子だな、、と。
ところがどっこい!シリーズ10作品を通しての彼女の目まぐるしい成長と過去との邂逅、今は亡き両親、そして犀川への想い、、。
いつの間にか萌絵の虜になり、彼女のくるくると変わる表情、感情に、こちらまで浮かされてしまうのでした。
彼女の素敵ポイントは、感情に素直なとこ、思考するときについつい上を見上げること、猫舌なとこ、用意周到なとこ、犀川だけを見ていること、などなど。
辛い過去が呼び起こされる度に苦悩する萌絵、記憶を消し去るほどの強い意志で自分を守ろうとした事実に胸が苦しくなります。

『__呼吸するだけの存在に、自分は成り下がった、と萌絵は感じる。
自分は、もう......。
呼吸をするだけ。
それだけの存在だったのだ。
もともと......。
先生には......。
犀川先生には、私は見えない。
私は見えない。__』

『__私も消えたい。
最初から、そうだった。
ずっと、お願いしていた。
神様に......。
お父様と、お母様のもとへ......。
神様。
お願いです。
それが、最後の意志だった。』

有限と微小のパン/森博嗣 より

犀川と真賀田博士がバーチャルリアリティ上で言葉を交わしている時の萌絵が感じた疎外感、恐れ、やるせなさ。その後襲ってくる受け入れ難い過去、記憶。どれだけ側にいても、言葉を交わし分かりあっても、犀川は自分を見ていない。萌絵を通してずっと先を歩く真賀田博士を見つめている。そんな錯覚、いやそれが真実なのだろうか。私には断定して言えないが、犀川サイドの言葉を読むと、それもまた真実なのかもしれないと思わされる。みんな消えてしまった、萌絵のそばから、みんな。航空機事故で亡くなった両親の最期、暑い体育館、灰、割れた眼鏡、血、紫のワンピース。萌絵の中で泣いている"萌絵"が願った最後の意志。

正直、涙が止まらなかったです。ただの感情移入しすぎなだけなんですけどね。
ポジティブな極に犀川を、ネガティブな極に真賀田博士を置いて、なんとかバランスを取っていた。でも本当はそんな子供騙しの底で、彼女はずっと、ずっとずっと泣いていたんだろうなぁと。どうして自分は消えることができないのか、絶望しながら生きて、それでもまだ、犀川は萌絵ではなく真賀田博士に囚われている。

『有限と微小のパン』では、犀川が真賀田博士に惹かれていると思われるシーンが多く見られた。これは1作目からそうではあるのだが、、。
天才同士の会合。犀川の中の一番本能に近い"犀川"が、真賀田博士と共に生きたい、と願っていた。

真賀田四季は紛れもない天才で、ある意味純粋である。そんな彼女のひと言ひと言が、恐ろしくも美しく、そしてこの世の真理だった。
私は萌絵に、過去から解放されて欲しい。ずっと犀川の隣で心から安心して笑っていて欲しい、例えば犀川の突飛なジョークをくすくす笑ったり、たまに見抜いたりしていてほしい、と思っているのだが、その一方で犀川と真賀田博士の会話ひとつひとつに戦慄するほど美しさを感じているのも、また事実だった。複雑なんです。

タイトルにもある通り、自分は本当にひとつなのか。この生きている身体をひとつとするのか、ならば死んだらひとつではないのか。
それぞれに主張する自分の中の自分たちをひとつに強制することが正なのか、否か。叫ぶ自分は敵なのか、泣いている自分は守る対象なのか。ひとつにする必要性はあるのか。
これらは私たちが生きていく上での命題なのです。私の中の私たち。彼女たちは、本当は統合されるべきではないのかもしれない。人にやさしく穏やかな自分、過去に縛られ座り込み膝を抱えている自分、真っ直ぐで激しく攻撃的な自分、、。そのすべてを受け入れる覚悟、もしくはその手綱を握れた時、私たちは完全なる人間に近付くのではないだろうか。


かなり長くなってしまいましたが、今回はここまで。いや〜すっきりです(  ˶'ᵕ'˶)
どうしても萌絵ちゃんについての気持ちを誰かに聞いて欲しかったんです、、!
もしどなたかの共感を得られたりしましたら幸いです。

今後はGシリーズ等を読みながら犀川&萌絵の様子を垣間見れたらなと思います。

それでは、また次回でお会いしましょう♩

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