WFP2024年7月号 感想
バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
Web Fairy Paradise 2024年7月号(第193号)の感想を書いていきます。
1.ボカスカルールの拡張
(pp.3-4)
「ボカスカ」は複数の駒を同時に着手するかなり特殊なルールです。
本稿では拡張ルールである「全ボカスカ」を紹介すると共に、「九重限定打」が可能であることが示されています。
「ボカスカ」及び「全ボカスカ」の検討プログラムを神無次郎さんが開発中とのこと。
「グループ不利合」のような着手同士を有機的に関連付けた手筋も、今後精力的に開拓されていくでしょう。
2.Fairy of the Forest #78 結果発表
(pp.29-32)
78-02 北村太路作
玉が一周して元の位置に。
3手目に67桂・47桂のどちらを指すかは何手も後に分かる構成。
3.協力詰・協力自玉詰 解付き #26
(pp.38-43)
26-1 上谷直希作
取られる駒と詰める駒が入れ替わるツイン。
チェス・プロブレムでいうZilahiです。
本作の凄さは駒配置をシフトするツイン設定で実現しているところ。
手順の差異が盤の性質によって生じているのが実にエレガント。
26-2 上谷直希作
角の最遠移動から限定打という派手な手が飛び出す作品。
その意味付けは巧妙で、嚙むと更に味が出てくる感じ。
26-3 springs作
受方飛が盤の端に沿って移動する豪快な作品。
飛”生”との組み合わせで緊張感のある手順になっています。
4.埋駒とその関連(4)
(pp.44-49)
この論考も第4回。
分類や整理をすることは重要です。
将来とても価値のある論考になることでしょう。
5.Parrain Circeの紹介
(pp.56-61)
「Parrain Circe」というフェアリールールを紹介しています。
「同時に複数の駒を着手できる」という特殊性がとても面白いルールです。
antillesさんとウマノコさんに例題を提供いただいたおかげで、充実した内容になりました。
6.「詰将棋メーカー」好作選(2024年5・6月)
(pp.62-73)
No.228 コセ作
「盤面の成駒も駒台に移るときは生駒になる」というのがミソ。
衝立では受方が成桂・生桂どちらで取ったのか区別できない。
成桂配置をこんなにも巧く活かした作品が創れるとは驚き。
No.235 springs作
一枚の駒に二重のピンを掛けるという構造は斬新。
No.242 げん作
Lortap+Imitatorで壁駒ができない詰上りを実現。
擬似透かし詰の壁駒バージョン。
No.246 yabecchi0210作
明快な意味付けで馬鋸が出現。
私好みの作品。
No.248 げん作
繰り返し手順でひたすらImitatorを輸送するという明快な構成。
Imitatorに特徴的な軌跡を描かせた作品はこれまでにも何作か発表されていて、例えば以下の作品が挙げられます。
どのように発展していくか楽しみな分野です。