WFP2024年4月号 感想
バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
Web Fairy Paradise 2024年4月号(第190号)の感想を書いていきます。
1.連続王手の千日手禁(その2)
(pp.3-4)
前号(第189号)に引き続き、連続王手の千日手禁に関する内容。
「連続王手の千日手禁」と「フィルター系ルール」の組み合わせで生じる問題について議論されています。
「フィルター系ルール」は一般的な用語ではなく、神無七郎氏が用いている用語です。
第143号「ルールの手順前後と不協和音」で述べられているように、「全合法手から一定の基準で指せる着手を絞り込むルール」を指しています。
反則によって特定の着手ができない状態も、「フィルタリングされている」と捉えられます。
複数種のフィルター、図1の場合は「連続王手の千日手禁」と「禁欲」という二種類のフィルターがあるわけですが、先にどちらでフィルタリングするかで可能な着手が変わるという内容です。
「将棋の禁則」など将棋のルールから生じるフィルターもありますし、詰将棋独自の「王手義務」などもある意味そうでしょう。
フィルター系ルールも合わせれば、フィルターの組み合わせはかなり多くなります。
本稿の内容は「連続王手の千日手禁」に留まらず、「着手のフィルター」という観点が様々なアイデアを生む可能性があることも示唆しています。
2.今月の手筋
(p.14, 60)
フェアリー手筋カード集:https://k7ro.sakura.ne.jp/wfp/FCard/CardList.html
今回紹介されている手筋は「千日手誘致の不成」。
フェアリールールで新たに導入された禁則は、打歩詰のように「回避(打開)」と「誘致」の手筋を生む可能性があります。
本作は「千日手禁」の導入によって「千日手誘致」が生まれるという例です。
直近では「駒余り禁」を用いた例(WFP第187号 第158回WFP作品展 158-2 駒井めい作)があります。
3.第159回WFP作品展結果
(pp.15-35)
WFP作品展鑑賞室:https://k7ro.sakura.ne.jp/wfp/EnjoyWFP.html
159-3 駒井めい作
自作。
本作はるかなん氏によるオール中立駒作品(WFP第181号 第153回WFP作品展 153-4)に影響を受けて創ったものです。
結果稿(第183号)で作者が言及しているように、中立玉に対して中立飛・角で王手を掛けるのは不可能です。
「それを可能にするには?」という疑問は、フェアリー詰将棋作家なら自然に湧くところでしょう。
私の答えが「複玉」との組み合わせであり、本作というわけです。
159-5 springs作
緻密に構築された収束部が、趣向部を成立させているという興味深い構造を持った作品です。
良い意味で「短編作家が創った趣向作」という感じで、独特な味わいがあります。
159-6 るかなん作
攻方・受方・中立と三種の玉が登場する作品。
興味深いのがbで、受方玉ではなく中立玉を残すのが不思議な感じです。
「中立玉」と「複玉」の組み合わせは非常に難解ですが、発展性を強く感じます。
159-9 上田吉一作
明快で緻密なロジックで受方龍の遠回りを実現。
159-10 さつき作
易しくも程良く悩みどころがある衝立推理。
衝立詰より衝立推理の方がルールを理解しやすいでしょう。
衝立の面白さを味わうのに良い出題形式だと思います。
159-11 変寝夢作
4枚同時限定打はインパクト大。
4.Fairy of the Forest #77 結果発表
(pp.37-41)
77-2 神無七郎作
詰ますためには桂を取る必要があり、桂を取るためにはと金を取る必要があるという構造。
複雑な手順で、限定されているのが実に不思議。
77-3 三角淳作
成銀と成桂で飛車を入手する手順。
二歩禁のせいで余計に一周必要になるのも面白いです。
5.第21回フェアリー入門解答
(pp.61-73)
第21回の課題は「Queen」でした。
Queenは動けるマスが多く、特にQueen王の作品は難しかったです。
6.協力詰・協力自玉詰 解付き #23
(pp.82-84)
23-1 堺健太郎作
三枚の攻方歩を活用するために、歩生を経由して歩成をする構成。
受方に協力の余地を与える歩生が多々登場し、協力詰らしさ溢れる作品です。
フェアリー雑談
創作課題を出しています。
今回はZugzwangがテーマ。
普通詰将棋では効果的に表現できません。
フェアリーらしい課題だと思います。
7.埋駒とその関連(1)
(pp.85-89)
退駒は良い名称に思えます。