ねこネタ 黒
うちの先住猫、黒猫のスズ。ふわふわマスコット体型で毛並みはつやつや。たとえ嫌がられても抱きしめたい、そんな見た目ではあるものの、性格は神経質で怒りっぽく、彼女の意思を尊重しないと噛まれてしまう。エサをねだるときに足首に噛み付く不器用さ。少食でいつもお腹を空かせてるのに、ちゅーるもまぐろも食べず、カリカリ一筋。来て早々捻挫し、ベビーガードも飛び越えられない運動オンチ。ドアを開けて欲しい時に、こちらをじっと見つめながら壁をガリガリ削る困ったやつ。遊んでいた紐付きのねずみのおもちゃが脚に絡まり、パニックで走り回って過呼吸になったこともある。エピソードには事欠かない猫。
でも赤ん坊には優しくて、抱きつかれても黙って耐え、絶対に噛んだり引っかかない。そして夜になって人間が寝室にひっこむと、うにゃにゃにゃなゃ、と鳴きながら慌てて走ってくる姿が堪らなく愛しい。
そんなスズに、私はなぜかとても愛されている。私が部屋を出れば必ず着いてきて、2階に上がれば階段を先回りし踊り場で撫でてと顔を上げる。暇なとき、すずー、すずーと呼ばわると、何回目かでちゃんと降りてくる。明け方、暗い時間に起きだすと、どこからともなく現れてにゃあにゃあ撫でてと甘える。無償の愛はこれだと思う。この猫は、自分が死んでも気づかずに、暗がりでついて歩くんじゃないかと半ば確信している。その時に、気づいて欲しくてどんな困り事を引き起こすのか。この愛の代償を考えて、ときどき、ぞわぞわしてしまう。
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