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チョコレートは発酵食品。香味を決める自然の力──meiji THE Chocolateの香味の秘密 #7
チョコレートは発酵食品です。
そう聞くと意外に思われる方も多いかもしれませんが、チョコレートは納豆や味噌のように、微生物の働きによって香味や栄養価が高まった食品の一つなんです。今回は、チョコレート作りにおいて欠かせない重要なプロセスである「発酵」の役割について語ります。
チョコレート作りに欠かせない発酵
納豆、味噌、醤油、酢、日本酒──日本には昔からたくさんの発酵食品が存在します。世界を見渡すと、ワインやビール、キムチ、ヨーグルトも発酵食品の仲間であり、チョコレートもその一員です。
日本で、そして世界で人々の食生活を豊かに彩っている発酵食品とは、そもそもどのようにして生み出されているのでしょうか。
発酵とは、乳酸菌、麹菌、酵母といった微生物の働きによって食物が変化し、人間にとって有用な変化が起こること。発酵食品とは、発酵によってもともとの味わいや香り、栄養価や健康調節機能が向上した食品を指します。チョコレートの原料であるカカオ豆も、発酵のプロセスによっておいしいチョコレートを作るカカオ豆に変身するのです。
では、カカオ豆がいかにして発酵していくのか。その工程を見てみましょう。
カカオの木になる実は「カカオポッド」と呼ばれ、その中には白い果肉(パルプ)に包まれた種子が入っています。この種子こそ「カカオ豆」。その種子を白い果肉ごとバナナの葉に包んだり、木箱に入れたりして3~7日間おいておくと、酵母や乳酸菌、酢酸菌などの微生物の力によりパルプが発酵していきます。発酵の途中でカカオ豆を撹拌(かくはん)しますが、これは微生物が好む酸素を取り入れ、発酵を促すためです。
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発酵の過程で大活躍する微生物は人為的に加えているのではありません。ポッドや土壌、作業具など、自然な環境の中で生きている菌が作用してカカオ豆が発酵し、味と香りのもととなる「前駆体」を作り出します。
カカオ豆の中にできる「前駆体」とは、発酵によってタンパク質から分解されてできるアミノ酸や、炭水化物から分解されてできる糖のこと。ローストしたときにチョコレートに味と香りをもたらす前駆体が、発酵によってカカオ豆の中にぎゅっと閉じ込められます。
発酵を経なければ、この「前駆体」を作り出すことはできません。発酵はチョコレート作りには絶対不可欠の工程です。
発酵が終わったカカオ豆は乾燥させた後、産地から世界各地に輸出されます。輸入されたカカオ豆をローストして細かく粉砕すると、この「前駆体」から味と香りが放出されていくのです。
発酵がチョコレートの味を左右する
これまでお話してきたように、カカオには主に4つの品種(クリオロ、フォラステロ、トリニタリオ、ナシォナール)があり、それぞれに個性や特性があります。この品種による違いは発酵や焙炒によって埋めることはできません。チョコレートの香味の決め手となるのは、何よりもまずカカオの品種といっていいでしょう。
しかし、それぞれの品種が持つ香味は発酵条件によって変化します。
例えば、発酵日数を長くすると酸味が強くなり、チョコレート感も増しますが、反対に総ポリフェノール量は低くなり、フローラルな香りや渋みも弱くなります。
つまり、発酵をコントロールすればチョコレートの香味を変えられるということ。品種を選び、発酵をうまく調整することによって、チョコレートの味と香りの約70%が決まるとも言われています。
とはいえ、カカオ農家に任せっきりでは求める味に達することは難しく、例えば、15年以上前に訪れたベネズエラでは発酵日数は農家によって異なり、発酵の途中に行われる撹拌もやり方や頻度はバラバラ。これでは出来上がるカカオ豆もカカオの香味も品質が安定しません。
「このような香味のチョコレートを作りたい」「ポリフェノールが豊富なチョコレートを作りたい」など、目指す品質の実現のためには、発酵のプロセスに明治が主体的に関与し、そのやり方の理解と協力を得ることが必要でした。
だからこそ、明治は2006年からカカオ農家や農地に足を運び、発酵のコントロールを長い年月をかけて行い「明治スペシャリティカカオ豆」を作り上げました。自分たちが本当に求める香味、お客さまにお届けしたいチョコレートを農家と協働して形にするためです。
既に流通しているのカカオ豆を使うのではなく、農家と共に発酵にも携わり責任を持つ。これが「明治スペシャリティカカオ豆」への大きな一歩でした。
次回は、明治が追求してきた発酵について、さらに詳しく解説します。
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