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“幻のカカオ”、その特別な香味を追い求めて──meiji THE Chocolateの香味の秘密 #4
収穫量が極めて少なく、「幻のカカオ」とも評される希少種、「ホワイトカカオ」をご存じですか? 世界のカカオ生産量に占める割合はわずか約0.002%とされるホワイトカカオは、その名の通り真っ白い種子の実をつけるカカオです。「ホワイトチョコレート」とは異なり、製品としてのチョコレート自体は茶色いもので、ナッティかつクリーミーな香味が特徴です。
カカオは品種の交配が容易なため、古来の性質を維持した品種は今ではめずらしくなっています。そのような中、オリジナリティを保ったホワイトカカオがメキシコで確認され、明治はメキシコ政府が認定した品種を元に、2016年から現地にホワイトカカオ農園を開設しました。そして、収穫したホワイトカカオを使った商品をバレンタインのシーズン限定で発売しています。
国内外のトップシェフからも高い評価をいただき、チョコレート界で脚光を浴びているのはホワイトカカオの唯一無二の個性ゆえ。香りも味も、そして起源も、際立ったストーリー性を内包しているカカオだからです。
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ホワイトカカオの伝播ロード
カカオは紀元前2000年ごろから、王侯貴族の飲み物として利用されていたことはよく知られています。長寿や滋養をもたらす食材であり、貨幣のように価値あるものとして流通していました。
では、カカオのルーツはどこなのでしょう。2018年、エクアドルとペルー、コロンビアの国境付近で発見された遺跡から、カカオの成分が含まれた土器が発見されました。その後の研究により、紀元前3300年からカカオが利用されてきたという説が有力視されています。カカオはここから移動や交配を繰り返しながら、品種系統と産地を拡大させていったのです。
ところでカカオの品種は、大きく分けると4系統があります。「クリオロ、フォラステロ、トリニタリオ、ナシォナール」の4品種です。このうち、クリオロこそが「ホワイトカカオ」と呼ばれる品種。カカオ豆の原種とされ、渋みが少なくフルーティな風味が特徴です。フォラステロは量が確保しやすく、一般的なカカオ風味を持った品種として普及しています。トリニタリオはクリオロとフォラステロの交配種で、ナシォナールは南米・エクアドルを中心に栽培されている品種です。これら4つの品種はそれぞれに異なる道をたどり、世界に普及していきました。
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クリオロは、カカオ起源地からメキシコに渡り、さらに太平洋を超えてフィリピン、インドネシア、インドへと渡り、マダガスカルまで伝播しました。とはいえ、クリオロは病気に弱く、他の品種と交配せずにオリジナルのままで生き残っているケースはまれです。これが、ホワイトカカオが「幻」とされてきたゆえんです。
希少なカカオ品種を現代によみがえらせよう
クリオロが伝播した先のメキシコでは、政府がメキシコカカオプロジェクトの下、カカオの品種整理や登録を進めていました。この中に希少種としてクリオロ種も登録され、これをきっかけにメキシコ南部のチアバス州・ソコヌスコ地域で栽培が行わるようになりました。このソコヌスコは、アステカ・マヤ文明とリンクした、チョコレート文明にとっては歴史的なエリアでもあります。
明治は、トレーサブルカカオ豆(商品の原料から加工、流通に至るまでのすべてを可視化、追跡可能なカカオ豆)の取引をしてきた会社との連携により、世界のカカオ農家を支援する取り組み「メイジ・カカオ・サポート」の一環として、ソコヌスコの農園でメキシコカカオプロジェクトを主導しました。2016年に現地に約60ヘクタールの専用農場を開設し、地元企業とともに希少なクリオロ品種を、現代のカカオ市場によみがえらせることに挑戦しています。
この農園の最大の特徴は、単一品種農園であること。カカオは他の木の花粉を受粉してしまうため、容易に交配してしまいます。それを避けるためには農園内での厳密な管理が欠かせません。そこで、メキシコ政府による認定を受けた品種を植栽し、他の木からの花粉を防ぐバリアを設け、1本の木に1本のスプリンクラーを設置しています。メキシコホワイトカカオの唯一無二の独自価値を守り続けること。それが明治の使命です。
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ホワイトカカオでしかできないことを実現したい
では、ホワイトカカオにはどのような特徴があるのでしょうか。
他のカカオ品種と違って、ホワイトカカオには苦味や渋味をもたらすアントシアニン色素がありません。カカオ豆本来のナッティ感と、ラクトン類という成分に由来するクリーミーさが特徴で、さらに健康機能成分であるポリフェノールも多く含んでいます。
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クリーミーなチョコレートというとミルクチョコレートを思い浮かべますが、ミルクを使わずにクリーミーな味わいを楽しめるのはホワイトカカオならでは。ただし、そのままでは上質で美味しいチョコレートには仕上がりません。そこには高度な発酵技術が必要です。
明治がメキシコカカオプロジェクトに関わり始めた2016年当初は、発酵のコントロールはやや不十分で、ホワイトカカオには少しツンツンとした酸っぱさが残ってしまいましたが、その後、知見を蓄え、発酵コントロールを行うことでクオリティは年々、向上しています。ホワイトカカオのクオリティに対しては、日本のトップシェフからも称賛と期待の声をいただき、積極的に使用していただいています。
2017年には、フランスチョコレート界の権威あるクラブによる賞、CCC(Club des Croqueurs de Chocolat=チョコレートをかじる人たちのクラブ)アワードを受賞しました。これは大手メーカーとしては異例のこと。2019年には再びCCCアワードを受賞し、明治のメキシコホワイトカカオは世界の厳選チョコレートのタブレット部門の14種類の一つにも選ばれました。2020年には、2016年時の課題だった発酵コントロールも、発酵中の温度履歴などの調整を改善し、クリーミーさとフルーティーさを両立させることができました。光栄なことに、CCCのメンバーからはその味わいに「ブラボー!」との声をいただきました。
2022年のバレンタインシーズンには、生クリームを使わず、水だけを使用した生チョコ的な食感を実現したガナッシュ、「meiji THE Chocolate AROMA TRICK」が新登場。花をイメージしたシナモンアーモンドと、カカオポッドをイメージしたカカオフルーツの2種類のソースを閉じ込めました。
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しかし、この商品も一つの過程に過ぎません。明治が目指すのは世界一のホワイトカカオ農園、そして、世界一のホワイトカカオ豆のクオリティと世界初の実現です。ホワイトカカオという世にも稀なストーリーと個性を備えたカカオの魅力を最大限に引き出しながら量産化を果たし、ホワイトカカオでしかできないことを2025年には実現していきたいと考えています。
次回は、明治がこれまで蓄積してきたカカオの木の研究について解説します。
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