アナギ(あなぎ)
アナギ?
それは何?
アナギ?
未知の生物?
What's Anagi?
聞いたこともない。
見たこともない。
知っているはずもない。
それもそのはず娘が頭の中でつくり上げた空想上の生物だ。
息子(兄)は水産学部を卒業して現在社会人だが、まだ在学中だったある日の夕食時、それは娘(妹)との会話中に登場した。
「おにい、最近ウナギの稚魚の漁獲量が減ってきてるんやろ?水産学部に行ってることやし、ウナギの養殖が難しいなら、品種改良してウナギ味のアナゴをつくり出したらええやん。有名になれるで、名前はアナギでええやん、ウナギ味のアナゴでアナギ」
息子、沈黙。
「これ絶対うける、いや間違いない」
娘の根拠のない自信と誇らし気な顔。
息子、失笑。
食用ナマズの蒲焼きはウナギの蒲焼きに近いと聞いたことはあるが、いやはやウナギ味のアナゴとは。
親の欲目だが娘の発想力を「なかなかやるな」と感心しつつ、何はともあれ鰻は鰻として、穴子は穴子として食べたいと思った次第である。