2022/02/19; 小4の頃の担任

小学4年生の頃の担任、S氏のことが嫌いだった。始業式の日、新しいクラスで初めて席に着き、S氏が入ってくる。角刈りの頭に色黒の肌、だらしなく出たお腹、強すぎる香水の匂い…S氏の風貌はどこを切っても「おっさん」だった。私は、子供の持つ正直で残酷な目をもって、即刻この先生を嫌いと認定したのだった。

S氏は期待に応えてか、給食中に喋ってはいけない、漢字テストの結果が悪いと罰ゲーム、など、いや〜なルールでクラスを支配した。私はうんざりして、S氏の言動を自分の頭から排除するように努めた。中でもS氏が際限なく口にしていた言葉、「見れば分かる、聞けば分かる、やればもっと分かる」という言葉を、できる限り聞き入れまいとした。

嫌いな担任から幾度も発されるこの言葉は、反抗すべきものの象徴として、私の脳みそに貼り付いた。しかしこの言葉は、子供にとっての真理を見事に射抜いていた。そこがタチの悪いところだ。勉強、スポーツ、ゲーム…私が新しいことに挑戦する度、「やってみれば色々分かるんだ」という、この言葉の揺るぎない正しさが立ちはだかる。反抗しようとしてもできない。私は蜘蛛の巣に引っかかった虫のように、背後でほくそ笑むS氏の姿に歯を食いしばるしかなかった。

あれから15年近くが経った。時々例の言葉を思い出しては、大切なことを教えてくれて案外悪い先生じゃなかったかもな…と思うのだが、すぐ、いやいや奴が私や友達にした仕打ちを忘れるな…!!と首を振る。あんなに嫌うことはなかったんじゃないの、とは思うけど。

時の流れとは怖いもので、今となってはあの思い出も自分を形作る重要な時間だった、などと考えることもある。将来、好きな先生よりS氏のことを頻繁に思い出して暮らすよ、なんて当時の私に伝えたら、どんな顔をするのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?