2021/03/20; 宿命

「星新一のショートショート」という星新一さんのSF短編集がある。1つの物語を10分くらいで読み終えることができるので、昔よく読んだのを覚えている。内容は風刺や皮肉に富んでおり、幼い私には理解できないものも多かったのだが。
当時、「星新一のショートショート」はNHKでアニメもやっていて、毎度録画して家族みんなで見ていたことが懐かしい。

印象に残っているアニメの1つに「宿命」というものがある。記憶は定かでないが、こんな話だった。

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どこか遠くの星で、ロボットたちが何年にも渡って宇宙船を作っている。ロボットたちは、理由は分からないまま、とにかく宇宙船を組み立て続ける。つまらない仕事でも、これが宿命だから仕方ないと半ば諦めながら。
遂に宇宙船が完成し、ロボットたちは宇宙船に乗り込む。目的地である地球に到着すると、何やら地球人が歓声を上げている。ロボットは「遂に帰ってきました!」と言う地球人の声を聞き、自分たちは地球人の娯楽のために作られたものだと気づくのであった。

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ロボットたちは、自分たちを突き動かしてきた宿命が、地球人というよく分からない生物にプログラムされたものに過ぎないと理解し、落胆したような、失望したような表情を見せて、このアニメは終わる。この表情が、ロボットなのになぜかリアルで、当時の私にはとても怖かった。今でも、あのシーンの色使いまで鮮明に思い出せる。

私たちにとって、宿命とは生きることだと思う。理由もわからないまま、ただ生きる。目的もなく、子孫を残す。この宿命を全うした時、つまり私たちが死んだ時、待っているのは何なのだろうか。私たちは神様みたいな奴の娯楽で作られたんだと気づき、落胆するんだろうか。
そうだとするなら、私は神様に文句を言いたい。お前が適当に作ったせいで人生大変だったじゃねーか!もっと愛情込めて真剣に作れ!と。そして今度は私が作る側に回って、幸せの達人みたいな人間を作りたい。

当時意味が分からなかった物語も、今ならより面白く読める気がする。久し振りに読み返そうかな。和田誠さんのあのゆるっとした絵もまた見たいし。

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