2020/08/04; 読んだ本を紹介します
「東大名誉教授と原文で楽しむ英文読書術」(行方昭夫) という本を読んだ。これが非常に良い本だったので、今日はその紹介をしたい。
https://www.dhc.co.jp/goods/goodsdetail.jsp?gCode=895400
まず言いたいのが、英文なんて敷居が高いと思わず読んでみてほしい。この本は英語が苦手でも楽しめるように書かれているし、読んで後悔することは多分ない。
この本は、英文の短編5作と、著者による翻訳と解説から成る。見開きの左ページの上半分に原文、右ページの上半分に和訳、そして見開きの下半分には意味の取りにくい英文の詳しい解説が記されている。だから英語が苦手な人でも、知らない単語や英文特有の言い回しに悩まされることはない。
自分が英文法は比較的得意だと思っていたが、井の中の蛙だったと言わざるを得ない。物語に出てくる英文法は非常に難しく、一読して意味が取れるのは半分くらいしかなかったのではないだろうか。著者の巧みな和訳と解説がなければ挫折しただろう。しかし、ところどころで感じる英語のリズムや日本語との違いは、読んでいて面白いなぁと感じた。
これだけでも、英語が好きな人にとっては非常に面白い内容となっている。しかしこの本、これだけではない。
この本が執筆された目的は英語学習の他にもう1つある。それは「読書の楽しみを知ってほしい」という著者の願いを叶えることだ。英語が好きな人だけでなく、物語が好きな人も存分に楽しめる本となるよう工夫がされている。
英語はもちろん横書きなので、上で述べた英語の和訳と英文の解説は左開きで書かれている。一方、裏表紙からこの本を開くと、なんと短編全編の翻訳と、著者による物語の解説「物語を読む」が縦書きで書かれているのである。
俺はこの「物語を読む」を読んで、「今まで読書の ど の字も知らなかった...。」と嘆くことになった。表面だけしか見ない、非常に浅い読書をしていたと気付かされたのだ。いわば寿司を目の前にして、ネタをぺろっと舐めて「美味い!」とか「いまいち...」とか言ってたのと同然だった。俺は寿司を食べてすらいなかった...。
著者は「物語を読む」の中で、「このシーンで主人公の〇〇という性格が見て取れますね」とか「当時の文化ではこのセリフは〇〇を暗示していました」などという道標を示してくれる。
わざわざ言葉にして示すなど無粋だと思う方もいるかもしれないが、俺は言われないと気づけないことばかりだった。言葉で示してくれて初めて、「あぁ、こういうことを考えながら読むと物語をもっと楽しめるんだ」と分かったのである。
物語を読む時、「作者の考えを理解しきれない...」と歯痒い思いをしたことはないだろうか。俺は何度もある。それは「読書」= 「ただ文字を読み進めること」と勘違いしていたからだった。1文1文に込められた思いを紐解く、これが読書なのだ。
この本を読んで、ようやく寿司を口まで運べるようになった。そしてただ美味いだけじゃなく、味わい、なぜ美味いのかまで考えられるようになった気がする。
驚くべきことに、この本はまだ深みがある。縦書きの最後に『英文学に見る「全面的な真実」』という長めのコラムが載っている。このコラムが、今まで俺が感じていた物語に対する不信感を払拭するもので、非常にためになるものだった。内容はここでは触れないので、ぜひその目で確かめてみてほしい。この本が1人でも多くの人に読まれることをねがっている。
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