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駅から2分、こういう庭が欲しかった――殿ヶ谷戸庭園再訪。

2月に初めて訪れたときにこう思った。公園って、こんなふうに愉しむこともできるのか。近所だし月イチくらいで通いたい。そして10月、ようやく再訪した。遅い。タイミングというのは、そういうものだ。

霧雨の昼下がり、国分寺駅で時間を持て余した。「そうだ 庭園、行こう」 駅から2分、個人一般150円で中に入ると、雨だからか、体感的には殆ど貸し切りだった。贅沢。傘を広げたり畳んだりするような雨がちな天気で、空はライトグレーに明るくて、すべての色が瑞々しく見える。

ほら、アメリカンチェリーみたいな、あの暗赤色の実も、雨粒をまとって、いっそう艷やかに見える。

サンザシ。
名前だけを知っていた植物の実際の姿を、
思いがけず知ることができると楽しいですね。

いよいよ、庭園エリアに入ると、一面の緑が目に飛び込んできます。緑の大芝生が広がり、いろんな種類の、大きさも様々な松の木々が青々と点在しています。明るい曇空のもとで陰影が柔らかく、目に優しい景色に呼吸がゆるみます。

その中に1本、全体に赤い松があって、どこか儚げな風情で、珍しい、と眺めていたのですが、隣に同じ種類の松であったと思われる大きな切り株があったので、隣同士で病気に罹ってしまったのかもしれません。それもまた風景。あの赤い松の木がいずれ奇跡の復活を遂げるのか、大きな切り株だけを残してゆくのか、今後の動向を見守っていきましょう。

前回は骨組みだけだった、想像の中でだけ葉を繁られせていた萩のトンネルも、いまは小さな柔らかな葉が透き加減に覆っていて、冬よりも幅狭くなった道から晴れた日に見上げて、斑な葉の隙間から秋の空の色を眺めたい。花はまだこれから。

中央線から直線距離の最短距離の位置で100メートルも離れていなさそうなのだけど、電車の通過音や駅のざわめきは聞こえない。周囲の道路も交通量が少なくて、イヤホンを外していても静かな感じがする。でも、それがここでは退屈じゃないんだ。

 萩のトンネルを抜けると、ふっと空間が緩やかになって、小ぢんまりとした藤棚の下に出る。規模の大きなものではないけど、萩のトンネルからの対比で視界が広がった快さがある。そこまでは平坦だったのが、そこからは下り坂になる。斜面には花木が種々植えられて、見上げていた視線が花木と下り坂のほうに向かって高さを変える。新しい景色を歩き始める。

ススキ。
ふわふわになって白く光るススキですが、
最初はこんなふうにシュッとしてるんですね。

足元が石畳から土の道に変わる。階段状になっているところは木のノンスリップがついているし、斜めになってるところにはムシロが敷いてある。うわぁ、濡れた土の上を歩くの、久しぶりだなあ。滑ったらカッコ悪いなあ、そろそろと歩く。滑りにくいように配慮されてるのに、土の道にビビり過ぎなんだが、用心して歩くのが懐かしい感じがして佳い。

花木のエリアを過ぎると、道幅が広がって、片側の緑が濃くなっている。何、この色は? 見上げるとクマザサが斜面を覆っているのだった。へぇ、クマザサ、こんなに奥行きのある感じで見たこと、無いなあ。殿ヶ谷戸庭園は、国分寺崖線の一画にある。足元から這い上がるように目線が動いてゆきました。

クマザサ。
崖線の高さを感じられます。
庭園全体としては標高差10メートル以上あるそうです。

反対側には竹林。こちらでは視線が一気に駆け上がります。葉が、予想以上に遠かった。

モウソウチク。
コンパクトな庭園ながら、
こんなふうに「長さ」を感じさせるエリアもあるのです。

 この日、出会った生物の写真です。

トンボの写真を撮れたのは初めてでした。


次郎弁天池にコイを発見!


この赤いのはキンギョでしょうか。

紅葉亭の裏手にある鹿威しは、かなりテンポよく音を立てていました。

前回来た時は、これがあることに全く気が付かなかった。
季節のものなのかもしれません。


2度目の今回も、楽しい庭でした。こういう庭が欲しかった。コンパクトな割に変化が多くて充実した散歩時間でした。


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