『かぐや様は告らせたい』最新刊で描かれる、ニヒルな男・石上優の本気
今年の8月に実写映画の続編公開が決定した『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』。
「恋愛は告白した方が負けなのである!」という強烈なフレーズから始まる本作は、秀才たちが集う秀知院学園を舞台に生徒会副会長・四宮かぐやと会長・白銀御行の恋愛頭脳戦を描いたラブコメディ作品だ。
当初は2人の高度な駆け引きと「もう付き合っちゃえよ!」と言いたくなるほどのむず痒い展開に注目していたが、物語が進むにつれて登場人物が増え、それと同時に2人の恋愛以外の見どころも増えていった。
その見どころの内の一つが、石上優(いしがみゆう)の恋愛模様だった。
かぐやたちの一つの下の学年で生徒会の会計をこなす彼は、元不登校児。会長である白銀に引っ張り出されたことがきっかけで生徒会入りする。
彼の特徴としては、とにかく"根暗で陰キャ"。部活動やクラス行事、そして恋愛、友情、努力!といった青春っぽいことへのコンプレックスが強く、基本的に永遠に悪口を言っている。ニヒルな男ではあるものの、実はとても負けず嫌いな性格で正義感も強い。
このギャップが彼の魅力。不器用な性格だけれど、何だか憎めない...それが石上優である。
そんな彼は体育祭で実行委員になったことをきっかけにつばめ先輩に好意を寄せるようになる。その後、文化祭やクリスマスでさまざまなアプローチを実行し石上はつばめ先輩に想いを伝えるのだ。
最新刊21巻ではつばめ先輩が卒業式を迎えるところから始まる。そして、その日は石上がつばめ先輩から告白の返事を貰う期日でもあるのだ。
いつもは基本的にギャグ展開が多い本作だが、21巻の石上とつばめ先輩のやりとりに関しては、思わず青春時代ならではの甘酸っぱい日々を思い返してしまうくらい切ないシーンやセリフが満載だった。
いつもはどこか斜に構えていて、青春っぽいことをバカにしてきた石上の全力。そしてその全力を出した先に彼は何を思うのか...。
主人公たちだけじゃなく、周りの脇役たちもしっかりと「主役」にするこのストーリー展開が『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』の魅力だし、21巻というそこそこ長編作品になった今でも変わらぬ人気を誇る理由だと思う。
21巻の中盤では、石上を励ますために奮闘する生徒会メンバーにも注目して欲しいのだが...。会長・白銀が提案してきた方法が自分と全く同じだったことに爆笑してしまったのはここだけの話である。