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あの夏の小天丼とグラスの小ビール。

コナリミサト先生の『珈琲いかがでしょう』が実写ドラマ化されることが決定した。

2019年の『凪のお暇』に続く二度目の実写ドラマ化。凪のお暇』では、ゴン役を演じ世の女性たちを虜にした中村倫也さんが『珈琲いかがでしょう』で主演を務めることが発表され、原作ファンを始めとする多くの人がこのドラマの放送を待ちわびているのではないだろうか。

コナリミサト先生が描く「食」

凪のお暇』と『珈琲いかがでしょう』に共通しているのは、誰もが抱える心の奥底のモヤモヤを鮮烈に描いているところだと思う。『凪のお暇』ではそのモヤモヤが溢れ返った結果、主人公・凪は今までをリセットするかのように現実から隔絶されたアパートへと引っ越す。『珈琲いかがでしょう』では、移動珈琲屋の青山が一杯のコーヒーを通して、彼ら彼女たちに救いの手を差し伸べる。

けれど、それ以上に私がこの2作品に心惹かれたのは「食」の描写だった。

凪のお暇』に登場する、チョコミントハイボールにパンの耳ラスク、豆苗スープ。そして珈琲いかがでしょう』のたまごマン珈琲、ガラムマサラ入りのカフェラテ。作れそう、でもなんとなくコツがいりそう...そんな絶妙なラインをせめてくる食の描写にどうしようもなく惹かれた。

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(2019年に期間限定で開催されていた「凪のお暇 豆苗カフェ」では念願のチョコミントハイボールとパンの耳ラスクにありつけた)

チェーン店飲みをこよなく愛すバリキャリOLの物語

そんなコナリミサト先生の「食」の描写に共感する方におすすめしたい作品がある。

チェーン店飲みをこよなく愛するバリキャリOL・紅河明(べにかわめい)が、仕事や人生に悩みながらもB級グルメに舌鼓を打つ日常系グルメマンガだ。

北海道出身の父、愛知県出身の母の言葉を足した彼女なりの「うまい!」の表現である「なまらうみゃーっ!」という叫びと共に登場するめくるめくチェーン店グルメたち。お酒も提供しているのか...という新発見と紅河明流の絶品アレンジはグルメ雑誌ばりの情報量で思わずマネをしたくなる。

あの夏の小天丼と小ビール

本作には「餃子の王将」や「エクセルシオールカフェ」「大戸屋」「長崎ちゃんぽん リンガーハット」といった、誰しもが一度は訪れたことがあるであろうあの愛すべきチェーン店たちが登場する。

ひとりで飲めるもん!』と初めて出会った時は、紅河明のマネをして「なまらうみゃーっ!」な1人飲みに興じたものだ。その中でも忘れられない一杯がある。

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「天丼 てんや」の小天丼とグラスの小ビールだ。

そもそも天丼が美味しいというのと、このグラスに入っているビールが最高すぎるというのは置いておいて...。

これは、昨年の夏にライターとして活動しているにも関わらず「何も書きたくない」という燃え尽き症候群のような思考に陥ってしまった時に食べた(飲んだ)小天丼とグラスの小ビールなのだ。

当時の私には、今も変わらないライターとしての夢があった。叶える方法はたくさんにあるにせよ「書く」というのは根底にあるもので当たり前の行為だ。そんな「書く」に対して、最初は"書きたい!"というポジティブな思いだったにも関わらず、昨年の夏は"書かなければ"という謎の強迫観念にかられていた。その結果、書きたいことが浮かばずTwitterではポジティブに振舞う一方で家で悶々とした日々を過ごしていた。

そんな時に読み返した作品がコナリミサト先生の『ひとりで飲めるもん!』だった。いつもだったら、どこがどのように面白いのかを深堀りして、記事の構成を考えたりするところだが、特に何も考えずにぼーっと読んで「あ、私も食べたいなぁ〜」みたいな。そんなゆるいけど確かな衝動で食べに行ったのがこの小天丼とグラスの小ビールだった。

ねぇ、聞いての気持ちで

無心で食べ続けて完食した時に思ったことは、やっぱり「書きたい!」だった...。とかそんなかっこいいことは生憎思い浮かばず、

「(心の声)やっぱり天丼うまいわ、てかビールがグラスに入っているところが最高なんだよな。そしてひとりで飲めるもん!は本当秀逸。まじで全人類に読んでほしい。バリキャリOLがチェーン店飲みっていうギャップも良いし、てかチェーン店飲みって結構みんな好きだよな...(略)」

というのが正直な話だ。

元々マンガを読むのが大好きで、人におすすめしたり、何がどう面白いのかを話すことが本当に大好きだった。なのに何で"書かなければ"なんて思っていたんだろう。

小天丼と小ビールを食べて『ひとりで飲めるもん!』という作品の素晴らしさを再認識して、心が高まってぽつぽつ呟いたように「ねぇ、聞いて」の気持ちでいれば良かったのだ。

あれからまた少し時間が経って、今では"書かなければ"なんて思わなくなった。その代わり、また外出自粛の世の中になってしまい気軽に「天丼 てんや」に行くこともできなくなってしまった。

けれど「ねぇ、聞いて」の気持ちが溢れているから私はまだ大丈夫なんだと思う。

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