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『タカコさん』から感じる、あの恋しい日常の音

静かなところよりも、カフェなど少々賑やかな場所の方が集中できるのは私だけだろうか。

実は人間は無意識に何かの音を探して聞く習性があるらしい。だから完全な無音状態になってしまうと神経が過敏になり反対に集中できなくなるそうだ。

どうやら集中するためには程よい雑音が必要不可欠のようだ。

だけど、あいも変わらず話題のウイルスのせいで、自宅で仕事をするようになって半年以上が経過した。たまにコーヒーを買いにカフェへ行くことはあっても、すぐに帰宅してしまう。店内が空いている時はそのまま居座ることもあるけれど、以前感じていたあの心地よい雑音はどこに行ってしまったのだろう。

日常のふとした時に感じる「音」

新久千映先生の『タカコさん』というマンガがる。

主人公はタイトル通りタカコさんという女性。一人でのんびりと過ごすことが好きな彼女は、日常のふとした時に感じる「音」を楽しむ天才だ。

忙しい日々の中では煩わしく感じてしまう雑音も、タカコさんはそんな音たちに想いを馳せては癒されいるのだ。そんなタカコさんの日常は、セリフ(口数)は少ないながらも、読んでいるととても穏やかな気持ちになれる。

そして、注目したいのは、タカコさんが"音"に聞き入っている時の描写だ。

例えば、突然降り出した雨の音、電車内で遅延した時に乗客から溢れる溜息の音、そしてカフェの程よい雑音。その一つ一つの擬音が手書きで表現されていて、セリフがなくとも伝わる不思議な魅力がある。

あの恋しい日常の音

『タカコさん』を読んでいると、なんだかずいぶん昔のことのように感じるあの恋しい日常の音がする。

うるさいのではなく、そこに当たり前にある"安心感"。そんな気持ちにさせてくれる音たちを感じられるのだ。

私がカフェで感じていたあの心地よい雑音を『タカコさん』で思い出しながら、また直接感じられる日を待ちたい。

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