『その男のハイヒール』偏愛の先に見えたのは新しい世界
韓国で人気のWEBマンガ「Webtoon(ウェブトゥーン)」。縦読み式を考慮したコマ割り、そしてフルカラーが魅力的なWebtoonは、最近だと「梨泰院クラス」の原作となる「六本木クラス」がピッコマでは配信されたことをきっかけに日本でも随分と浸透し始めたのではないでしょうか。
日本人のマンガ家だと東村アキコ先生が、2017年に韓国発のマンガアプリ「XOY」で初のWebtoon作品となる『偽装不倫』を連載し大きな話題を集めました。
今回は、そんな数あるWebtoon作品の中でも2021年1月に「ピッコマ」で独占配信された『その男のハイヒール』についてご紹介したいと思います。
とある平凡な男性会社員の裏の顔は
『その男のハイヒール』は淡い色彩と中性的な画風で男女問わず手に取りやすい表紙が目印です。
主人公は平凡な男性会社員。そんな彼の裏の顔は自分の美脚を活かしてハイヒールを履いた写真をアップするインスタグラマー。そんな秘密を隠している男性がある日、天才靴デザイナーに見出されミューズになる物語です。
ただハイヒールが好きというだけではなく、ハイブランドのハイヒールの靴の成り立ちや歴史を読み手である私たちに詳しく説明してくれるところ、そして復讐系や美醜系の作品が多いWebtoonには珍しい爽やかなサクセスストーリーを感じさせる展開が大変魅力的です。
彼がハイヒールに魅了されたきっかけ
平凡な会社員だった彼が、なぜハイヒールを履いてSNSに写真をアップするようになったのか...。
美脚を活かしたいからハイヒールを履いたのか。そもそも女装が趣味なのか。どちらも違います。
きっかけは大好きな彼女との別れでした。
良い靴を履いていると良い気分でいられるの。まるで私が特別な存在にでもなったような・・・。自信が持てて自分がもっと大切な存在になったような気分になるの。『その男のハイヒール』2話より
ハイヒールを履く度にそう言っていた最愛の彼女。時には、ふざけて主人公にハイヒールを履かせては「似合う!」なんてはしゃいでいたのも昔の話...。いつの間にか彼女は、自分よりもガッチリとした体型の男の元へと行ってしまいました。
失恋のショックから立ち直れない主人公は、彼女が部屋に置いていった一足の美しいハイヒールを見つけます。彼女を感じたくてハイヒールを履いた瞬間に感じたのは、かつて彼女が言っていた言葉そのものでした。
また、想像以上に自分の足がハイヒールと相性が良いことをきっかけに、主人公はどんどんハイヒールに魅了されて行きます。
その偏愛の先に
その結果、主人公はハイヒールを集めるだけに止まらずSNSで写真をアップしたり熱心に美しいハイヒールについて語るようになります。そのハイヒール愛はもはや「偏愛」の域に。
主人公にとって、かつてハイヒールは苦い失恋の象徴でした。けれど、気付いたらそのハイヒールに救われているというところにこの物語の秀逸さを感じます。
主人公のハイヒールへの偏愛は、天才靴デザイナーとの出会いに繋がり、自分では想像だにしない新しい世界へと足を踏み入れることになります。
偏愛の先にある、主人公の新たな物語。ぜひご覧ください。