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『don't like this』嫌いばかりの毎日を変えるのは小さな「初めて」たち。

いちだんと寒い日の朝が嫌い。満員電車の陰鬱とした空気が嫌い。会社に行くまでのあの坂が嫌い。

思い返せば、私の日常にはたくさんの小さな「嫌い」で溢れている。

先日、そんな私と同じように嫌いばかりの毎日を過ごす主人公の物語を読んだ。

嫌いばかりの彼女

don’t like this』の主人公・吉田めぐみは筋金入りのインドア。青くて長い缶のペプシとピザ、そして帰り道に飛行機が大きく見えること、それ以外はあまり好きじゃない。海外在住の親戚の家に住んでいて、その家は大きくてとても綺麗だけどやっぱり彼女はあまり好きじゃない。

そんな「嫌い」ばかりの彼女は元同僚から送られてきた「アナタの今の家は釣りをするのに最高の環境では?」というメッセージをきっかけに釣りに挑戦する。

初めての釣り具購入、初めての釣り堀、初めてのハゼ釣り、初めての魚調理...。たくさんの初めてに彼女は戸惑いながらもそこに楽しみを見出してく。

小さな「初めて」たちと新しい「好き」

釣りでたくさんの初めてを経験すると同時に、近所だけれど今まで行こうとしなかった素敵な場所や人と交わっていき、やがてそれは彼女にとっての「好き」になる。小さな「初めて」たちが彼女の新しい「好き」を作ったのだ。

ただ、彼女自身はそんなことを心の中でつぶやくこともなく、淡々と日常が過ぎていくところが本作の魅力だと思う。こうして淡々と物語が進みドラマチックな展開や描写がないからこそ、読者である私もめぐみのように嫌いばかりの毎日を変えられるのではないかと希望を感じるのだ。

「don’t like this」な毎日だけど

タイトル通り「嫌い」ばかりの主人公が釣りを通して新しい人や世界と出会うことで「好き」が増えていく物語だけれど、これを読むと小さなことで良いから新しいことに挑戦したくなる。

「嫌い」を減らすことは難しいかもしれないけど、その分新しい「好き」をたくさん作っていきたい。


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