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その嘆きをピアノにのせて『すみれ先生は料理したくない』

どんなに完璧な人でも、苦手な事の一つや二つはあるのではないだろうか。

大久保ヒロミ先生の『すみれ先生は料理したくないに登場する主人公・白雪すみれがまさにそうだ。

モデルのような圧倒的美貌とスタイルを持ち、上品で優雅な佇まいから周囲から羨望の眼差しを向けられるピアノ教師・白雪すみれ。しかし、実生活は常に金欠、恋愛経験も乏しく、料理が大の苦手...!という周囲が持つイメージとは真反対の生活を送っている。

料理が苦手であるにも関わらず、なぜか毎回生徒たちの親御さんや周囲の人たちから手作りの料理を求められるシーンに遭遇するすみれ。その度に絶望的な表情を浮かべるものの、何だかんだ家で手作り料理にトライするのだ。毎回散々な結果に終わるのだが、料理が苦手な人からすると思わず共感するような展開の嵐で思わず笑ってしまう。

本作は、一見完璧に見えるモデル級美女・すみれが、苦手な手料理に奮闘していく様子をコミカルに描いた新感覚のクッキングギャグマンガとなっている。

けれど、料理が苦手な女性の失敗談をただ笑うのではなく、思わず応援したくなるようなすみれの人間的な魅力に注目してほしい。

すみれは料理を失敗する度に、その嘆きをピアノにぶつけて作曲をする。その嘆きからは、料理が苦手な人たちの声を代弁するものから、たまにはレトルトでも良いじゃない!という気負いしない料理への姿勢が感じられる。

手作り料理に対してはネガティブだけれど、できない自分に対してはものすごくポジティブ。これが白雪すみれの魅力だと思う。

彼女の桁違いの手作り料理の失敗談には失礼ながら笑ってしまうのだが、「できない」という自分に対して卑屈にならない、そんな彼女の前向きな姿勢に気付いたら元気をもらっているのだ。

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