映画『美人が婚活してみたら』を視聴してみた
※この記事は、映画『美人が婚活してみたら』のネタバレ内容を含みますので、閲覧される際は御注意くださいませ。
※始めはやや脱線気味の駄文の為、映画の感想だけをお読みになられたい場合は『*』以下をお読みください。
突然だが、私は最近、俳優の中村倫也さんにはまった。
去年放送されていた金曜ドラマ、『凪のお暇』を先日Huluで鑑賞した際に、メインの登場人物である『安良城ゴン』を演じる中村倫也さんに、萌えたのだ。声、目線、顔の筋肉の動き方、唇の開閉、全てに萌えた。
実写の連続ドラマの俳優さんに萌えたのは初めてだったので、中村倫也さんに一気に興味が湧くには理由も時間も多くは要らなかった。
私は、興味が湧いた対象のことはとことん調べ尽くして知り尽くしたいタイプなもので、直近でも、5スクロール程しないと『中村倫也』というワードから検索履歴を抜け出せないほど、中村倫也さん自身のことや、ご出演されていらっしゃる作品を調べていた。
これ以上記すと、『私にとっての中村倫也さんという概念』という記事になりかねない為自粛するが、そんな中なんと、中村倫也さんがバスローブを纏ったセクシーなシーンがあるという映画の情報を目にした。タイトルは、『美人が婚活してみたら』。婚活か、18歳のアマちゃん的には共感出来ないであろうテーマだな…。とは思ったが、なんと言っても中村倫也さんのバスローブ姿をお目にかかれるということなので、鑑賞を心に決めた(不純120%の動機)。
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さあ、ここからが記事の本編である。
(やや否定的な感想になってしまう部分がありますが、それでも宜しければお付き合い下さい。)
ーあらすじー
主人公のタカコは道行く誰もが振り返る美女。WEBデザイナーという仕事にも恵まれ、愚痴を聞いてくれるケイコという親友もいる。しかし、長くつきあってから相手が結婚していることが発覚するという恋愛が3回も続き、気づけば32歳になっていた。不毛な恋愛に疲れ果てたタカコの口から「死にたい……」という言葉がこぼれ出たその夜、タカコは結婚を決意し、婚活サイトに登録する。マッチングサイトで出会った本気で婚活に励む非モテ系の園木とデートを重ねながら、シングルズバーで知り合った結婚願望のないバツイチ・イケメン歯科医の矢田部に惹かれていくタカコ。実は自身の結婚生活に悩んでいたケイコは、タカコが結婚後についてまったく考えていないことに苛立ち始め、2人はとうとう本音を激しくぶつけあう大げんかをしてしまう。 (映画『美人が婚活してみたら』公式サイトより引用)
公園を引きで写したアングルから物語は始まる。寒色の衣服を身にまとった、綺麗な女性がトボトボと歩いてきて、喫煙者も居る灰皿が隣にあるベンチに腰掛ける姿が、やけにリアルで物憂げだったが、そこで取りだしたのは煙草ではなく、ポップコーン。
劇中、タカコがポップコーンを取り出し食べるシーンがいくつかあるのだが、いずれも『状況を変化させるタイミング』である気がする。
また、作業が行き詰まりポップコーンをダラダラと口に入れるタカコのシーンでは、上司が作業の期限を『来週の木曜まで』とタカコに指示しポップコーンを奪ったことから、タカコの仕事状況を支配したことを指していたのかな?と個人的に考察する。
逆に、タカコが酷く感傷的になり状況が停滞してしまった時に取り出していたのは、煙草であった。(ケイコ曰く、前の前の男か、前の前の前の男が吸っていたもの?)
以上の事だけでなく、言葉や表情ではないふとした描写が、何か意味深に見えるような、そんな深みのある作品だったと感じた。
他で言うと、足元や後ろ姿の描写が多く入っていたように思える。それらを鑑賞して、歩き方や靴と地面が擦れる音、背筋の伸び方、首の具合などが、その人物の感情を深く想像させられることに驚いた。
想像に行き着くことは簡単かもしれないが、想像を何処までも膨らませられる程の描写を表現することはとても難しいことだと思う。
この作品は、カメラアングルによってゾクッとするほどのリアリティが実現しているように思え、視覚的な表現で、こんなにも物語への依存度が違うのかと思った。
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これまで、映像や演出的な面に着目して雑感を綴ってきたが、物語の内容的なことについても記したく思う。長くなってしまうと思いますが、ご了承ください。
まず、今の私には縁のない『結婚』『婚活』というテーマについて、やはり正直あまりピンと来なかった。
しかし、タカコが親友のケイコと居酒屋で飲んでいるシーンで、タカコが「結婚生活において一番大切なことは?」と尋ねた際のケイコの返答、「忍耐。」を聞いた時は、思わず小さなため息をついてしまった。
例え、全てを愛せると誓えるほど好きな相手と結婚できたとしても、愛情と許容はきっと別物だ。気が遠くなるほどの月日を、全て相手を尊重して過ごしていくなんて絶対に不可能であると思う。きっと長い時間を誰かとと共に過ごすほど、忍耐・妥協・主張のバランスが難しくなるに違いない。そうなった際、起こるであろうすれ違いを察して、小さなため息が出たのだ。
主人公のタカコは、きっとそんな想像もせずに「結婚する」と行動を始めたのだろうから、本当にこんな三十路が存在するならば、今度は大きなため息を零してしまうところだが、長くつきあってから相手が結婚していることが発覚するという恋愛が3回も続いたタカコの過去から察するに、確かに婚活をする男性に既婚者はいないだろうし、婚活に目を向けたことはある意味戦略的だと感じた。
個人的に、少し気持ちがしんどかったのはここからである。
まず、タカコがシングルスバーで出会った田中圭さん演じるバツイチイケメン歯科医の矢田部。
バーボンの氷を回す姿の妖しさと、既にお酒が入っているタカコを気遣って、バーのマスターに「薄めで作って」と注文する畏さが印象的だった。きっと、こういう殿方がモテるんだろうなと感じていた。しかし、タカコとの二度目の逢瀬、酔っているタカコの手は矢田部の手に伸びて行ったが、結局その手は届くことなく力をなくしたようにテーブルから矢田部の太ももへ置かれる。その際矢田部が放った一言、「俺のこと、好きになっちゃった?」。
流石モテる男は…これだから…嫌い…。婚活中の女性相手に結婚願望は無いと公表している時点で真剣な関係は望んでないと手の内を晒しておいて、「好きになっちゃった?」?この時の『好き』の意味は?重みは?どのようなお気持ちで聞いたのかしら?
しかし、タカコは矢田部のことは別に好きではなかったと思う。何故なら、きっとタカコにとって『手を繋ぐこと』は愛情の印。過去に好きだった男性との回想、手を繋いでいるデザインのランプを見つめるタカコの様子、何よりエンディング・テーマの『手のうた』。タカコは、手を繋ぐ行為を最終的に矢田部にはせず、その手は太ももへ置かれた。それは、その後矢田部と肌を重ねたタカコが、煙草を吸いながら「セックスがしたかったってことなんだな。」と呟いたその心情の暗示とも思える。
タカコはこんなにもわかりやすく伏線を自分で張っていたのにも関わらず、この後すこぶる病んでいってしまう。きっとその要因のひとつは、お待ちかね、中村倫也さん演じる園木との関係だろう。
園木は、個人的にとても私情だらけの登場人物であった。まず、私の現在の好きな人に何となくタイプが似ている。もっと言うと、私自身とも似ている部分があると思う。さらに極めつけは、私の大好きな、中村倫也さんである。
とはいえ、劇中で最も可哀想な人物は?とこの作品を見た方にお聞きしたら、きっと80%以上の方はこの園木と言うのではないだろうか。
謙虚で、何事も順番を守り、真面目で、不器用で、だけれど登場人物のなかで一番結婚に対して前向きだ。もし私だったら、絶対に園木を選ぶだろうと思う。
ホテルでタカコと二人きりになった際には、他の男とのセックスの後の賢者タイムで自分をくだらない女だと嫌悪した後、親友と大喧嘩になり、グシャグシャの気持ちで流れ着いた先が自分であることも知らずに、タカコに「結婚を前提に」と告白をするがはぐらかされる。その後タカコがシャワーを浴びている間も、ベッドの枕をまとめておいたり、バスローブの下のパンツは脱ぐべきか、履くべきか…やっぱり脱ぐべきか…と迷っている姿を見て、思わず涙が出そうになった。
その後、タカコがシャワーからバスローブ姿で出てきて、いよいよ私が本来目的としていた園木(中村倫也さん)のセクシーシーン…
と思いきや、なんと、タカコがキスの寸前で『ごめんなさい!』と突き飛ばして逃げ出す結末に。ここでは、流石に色んな意味で涙が出てしまった。
タカコはこの後、大泣きしながら『恋愛をはしょれるわけなかった。やっとわかった。私、恋がしたかったんだ。』と自分の気持ちの正体に気付く。
確かにタカコは決断力や行動力はあるけれど、その結論は、結婚に対する想像不足・他者を巻き込む判断不足で、一番真っ当に婚活をしていた園木を踏み台にして得たものとして、個人的には納得しきれなかった。
タカコにだけ視点を向ければ、『美人な女性にも様々な苦労がある』『現状の打破にひたむきな女性の輝き』など、とても素晴らしいヒロイン像で励まされるものだ。
矢田部と園木は正反対な男性である。好きでもない男とセックスをした自分のくだらなさを知り、『結婚』を目的とした関係を築く直前で恋愛の価値を知ったというのもよく分かる。
なのになんなのだろう、知らないうちに親友のケイコとは仲直りしており、矢田部との関係を終わらせる描写はハッキリあるのに園木のその後は何も無く、川沿いを楽しそうに歌うタカコでエンディング…。
最終的にはなんだかモヤッとして終わってしまった。いつか心から笑って手を繋げる相手と出会えたらいいね〜…。というかんじ。
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この作品のレビューで、『女慣れしてていかにも本気で愛してくれなさそうな人のことばかり好きになるくせに、誠実で自分にまっすぐ向き合ってくれそうな人はなぜか好きになれないよね』といったものを見かけたが、タカコは矢田部とはセックスしただけで、好きではなかったはず。
この物語のヒロインは、結局誰のことも好きにならなかった。
そう考えると、ラブコメやロマンスにしては珍しいと思う。結果的に、自分の恋愛の目的を見つける為のツールとして利用されたのが『婚活』になったのだから、本当のタカコの恋愛はきっとここからなのだろう。
そして、大好きな中村倫也さん演じる園木が結局報われず酷い振られ方をして、さらに個人的にほんの少しだけ期待していたバスローブ姿の濡れ場は実在しなかったことが、心底残念で仕方ない…
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駄文長文の最低感想文となってしまいましたが、ひとまず作品に対しては以上となります。
ここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます。
そして、お疲れ様です。
以下、映画『美人が婚活してみたら』を鑑賞して改めて気付いた・変わった私の価値観などを綴っていきたいと思いますので、ご興味がある方はぜひお読みください。
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この作品のレビューで、『女慣れしてていかにも本気で愛してくれなさそうな人のことばかり好きになるくせに、誠実で自分にまっすぐ向き合ってくれそうな人はなぜか好きになれないよね』といったものを見かけたと記したが、私はこれが全くわからない。
スリルを感じて生まれる快感よりも切実な深みに陶酔する快感の方が濃厚で気持ちいいと感じる。
恋人の営みとして切っても切れないのが、やはりセックスだろう。個人的に、セックス自体は、ほとんど気持ちよくないものだと思う。
愛がなければ慈悲もない。また、愛がなければ誠は受け入れられない。それに気付いた瞬間、相手との間に『恋愛』が無いと、身体に感じる感覚を脳に伝える神経が全部死んだように、何も感じなくなる。
その面、仮に園木とタカコがあの夜を過ごしていたとしたら、それこそ本当に誰も幸せになれない結末になってしまっていたのではないかとすら思う。
愛してくれない相手をなぜ好きになるのか全く訳が分からない。自分が相手にとってかけがえのない存在ではない上にセックスも虚しい関係のどこに希望やときめきがあるのか、興味はあるが、わかりたくもない。
いつか、私が結婚をしたいとなった時は、忍耐・妥協・主張をなるべく穏やかに相手と共有し、常に意思疎通できる関係が築けるほど、深く切実に愛し合った恋人を選びたいな。