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さようなら、恋心

「先生のことが好きでした。言えないでずっと苦しかったので、伝えさせて下さい。今更どうなりたいとかそういうのは何もないんです。ただあなたの事が好きでした。」

確かそんなようなことを書いたと思う。
書いて、渡せなかった手紙を手放すことにした。
最寄り駅について真っ先にゴミ箱へ向かい、小さな封筒にさよならを告げる。

結構何も出来なかった。
わたしにはそんな勇気はなかったのだ。

この恋を始める勇気も、終わらせる勇気も。



久しぶりに彼から連絡が来た時は、何かが始まる予感がした。
「映画を作りました。時間があれば見に来て欲しいです。」

見に行くかどうか、毎日悩んでいた。
3年前彼がわたしの前からいなくなったとき、もう好きでいるのをやめようと決めた。

ひと回りも歳が離れている彼は、そんなことを感じさせないくらい少年のようで。
だけど同級生にはない大人の包容力もあって。
学生だったわたしは簡単に恋に落ちてしまった。

いつも残業をしていて。
夢をもっていて。
すこし訛りの残った話し方で。
話しかけるとすぐ照れて。
笑顔がかわいくて。

好きを隠そうとしても隠れないくらい、
彼を思って泣いてしまう程、好きだった。

彼はわたしを女として見ているのか分からなかった。
それも、心地よかった。
男性からの下心に嫌悪感を抱いてしまうわたしは、彼が人として自分に接してくれることが何よりも嬉しかった。

だけど、もっと仲良くなりたい。
もっと知りたい。そばにいたい。

気持ちは一方的に膨らんで、
だけど1歩踏み出す勇気も、彼に女として見られる心の準備も出来ていなかった。

そんな時、彼はわたしの前から姿を消した。

都合が良いと思った。
やっぱりわたしは恋愛なんて出来ないし、
彼は絶対に手に入らない。
とっとと忘れてまたいつも通りの毎日を過ごせばいいんだ。

だけど3年間、1日たりとも忘れることが出来なかった。

連絡先も知らない彼に会うことなんて出来ず、ただただ苦しい時間だけが過ぎた。


そんな時、彼から連絡が来たのだ。
彼は夢を叶えて、そしてわたしに連絡をくれた。

会いたい。
絶対に会いたい。
だけど、怖い。

会ったら何かが始まってしまうし、始まるということは終わるということだから。

この恋が終わってしまうのは悲しい。
だけど、何も始まらずまた彼に会えない時を過ごすのはもっと辛い。 

会って。決めるんだ。
始めるのか終わらせるのかを。

彼に会っても、何も伝えられないであろうことは想像できたから、
人生で初めてのラブレターを書いた。
一方的で、思いやりもない。
自己満の手紙だ。
彼に対する、挑戦状のような手紙。

わたしは覚悟を決めて、
招待されたミニシアターへ足を運んだ。

入ってすぐに彼が見えた。
何も変わっていない。
心臓は高鳴り、逃げるように足早に席につく。

映画が終わったら、
終わったら、声をかけよう。

「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「映画、招待してくれて嬉しかったです。」

なんて声を掛けようか、グルグル考えて、
映画の内容なんて全然入ってこない。


映画、終わらないで…

気付いたら終わっていた。
そして、人に流されるように扉からシアターの外へ。

彼は大勢の人に囲まれていた。
少しホッとして、人目のつかない場所に移動する。

きっと気付かれてない。
大丈夫。
落ち着いて。
彼を盗み見る。

だめだ。怖い。
こんなに近くにいるのに、
あんなに会いたかった人なのに。

自分でも自分がよく分からない。

気付いたらわたしは、来た道を必死で走っていた。誰も追いかけて来ないと分かっているのに、逃げるように電車に乗った。

恋愛が怖い。
自分が自分でなくなるようだし、
何よりも、好きと思った相手に好きになって貰えないこと。
今までの関係が壊れることが怖い。

それは、もう彼に会えないことよりも怖い。
そう気付いてしまった。

わたしが恋愛出来る日なんて来るのだろうか。

帰りの電車で妙に冷静になったわたしは、
虚しさと悔しさでいっぱいになりながら、
渡せなかった手紙を握りしめていた。

もう本当に終わりだ。

さようなら。
もう一生、人を好きになることはないね。

可哀想なわたし。

最近あった出来事を、小説の真似っぽく書いて見ました(笑)
自己満です。

自分の恋愛偏差値の低さと、恋愛不適合な所をさらけ出して楽になりたいです。

もう一生恋愛できないだろうなと、
既に諦めている25歳です。

普通に恋愛している人を見ると、羨ましくてしょうがない。
わたしとあの子と、どこでどうやってズレたんだーーー!!

何でわたしはこうなんだー!!!!



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