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映画『お熱いのがお好き』の感想

映画『お熱いのがお好き』を見た。原題は『Some Like It Hot』、監督・脚本はビリー・ワイルダー、1959年に公開されたモノクロ映画だ。

マフィアの殺人現場を目撃してしまった男二人が女装をして、女性の楽団に入って逃げる、というコメディだ。トニー・カーティスとジャック・レモンは、がたいがよいため、女だと言い張るのはどう考えても無理なのだが、そこはコメディ映画なのでスルーされる。

ジョー(トニー・カーティス)は、シュガー(マリリン・モンロー)に惚れてしまい、途中、男装をして口説くのだが、そのときシェル石油の御曹司のコスプレをして「貝を集めるのが趣味なんだ」と、無表情で言う。この男に騙されるモンローのことも馬鹿にしているし、シェル石油のことも小馬鹿にしている感じが楽しい。

面白かったのは、女装したジェリー(ジャック・レモン)が、大富豪に口説かれているうちに、だんだんその気になってしまう、というところだ。お金に目がくらんだのもあるし、ちやほやされると男も女も関係なく落ちるのだという人間のどうしようもなさが描かれている。好きだと言われたら、そりゃ悪い気はしない。もしかしたら、アイデンティティの脆さを指摘しているのかもしれない。わたしたちが考えているより、自分自身とは強固なものではない。いとも簡単に揺らぐのだと。

マリリン・モンローは線が細いのにグラマラスで、その声の高さにも驚いた。ただ、頭の悪い情緒不安定な人物として描かれており、そこに若干の悪意を感じる。

劇中では、モンローが『 I Wanna Be Loved By You』を歌うシーンがある。

やはり、名作はテンポがよく、見やすい。新作映画とあわせて、ビリー・ワイルダーやヒッチコックの作品も、どんどん観ていきたい。

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佐藤芽衣
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