ドラマ『タイガー&ドラゴン』(2005)の感想
ドラマ『タイガー&ドラゴン』をまとめて観た。2005年4月期にTBSで放送された全11回のドラマで、脚本家は宮藤官九郎、テーマは落語だ。
わたしは今、ここ10年ぐらいのあいだにDVDやBlu-rayに焼いていた未見の映画やドラマを観ている。2013年の再放送を録画していたようだ。(今、TVerなどでも観られるようなので、興味のある方はぜひ)
というわけで、リアルタイムでは観ていなかった連続ドラマを16年後にまとめて観るという経験を初めてした。
キャストは豪華。ある意味、今と変わらないメンバーが出ている。芸能界のトップにいる人たちはそれほど大きくは入れ替わらないのだとしたら、やはり大変厳しい世界だなと感じる。
ドラマの放送当時から、評判はとてもよかったことを覚えている。ここから落語ブームが始まったと言われている。
ドラマの構成(構造)が面白い。
ドラマ自体のストーリーと落語のストーリーが二重構造になっていたり、寄席でドラマの物語がメタ的に表現されたりする。ドラマの中の現実と落語の世界がシームレスに表現されている。
この作りは、好きなのだが、作中に出てくる人物たちのテンションが高く、声が大きく、人が多いのが、どうにも最後まで好きになれなかった。うるさくてかなわない、と年寄りじみたことを思ってしまった。
そして、16年も経過すると社会は大きく変化している。
長瀬智也が演じるヤクザ(反社会勢力)と落語家の交流などは、今は描けないだろう。2021年に公開された西川美和監督の『すばらしき世界』で、ヤクザは銀行口座も作れず、社会から疎外されている様子が描写されている。
そして、女性の描写が、2021年の基準で観ていると、なんともつらい。阿部サダヲが女性を追い回したりする描写も笑えないし、風俗に行くことを嬉々として語ったりするのも、どうも観ていてつらい。40歳の男性が20代前半の女性と付き合いたいと抜け抜けと公言するのも、見るのがつらい。もう少し間接的な表現だったらな、と思ってしまった。
主人公の虎(長瀬智也)と竜(岡田准一)、西田敏行と笑福亭鶴瓶のライバル関係が、もう少し緊迫感を持って描かれていたらなあ、と。それと、落語の代表的な作品が取り扱われているので、勉強にもなるのだが、もう少し寄席や修行の厳しさの描写があってもよかったかなと思う。このドラマを観ていると、真打になるのも、襲名も、かなり簡単なことに見えてしまう。
ただ、わたしはこのドラマの影響で変化した今の世界から語っているわけで、作品のすごみが理解できていないのだろう。
ドラマが現実に影響を及ぼし、それによって変化した現実がある。落語はシュールな設定もあり、非現実なストーリーが展開することもある。それを考慮すれば、やはりちゃんとした落語のドラマだ。
そして、今は動画でいくらでも落語が見られる環境がある。娯楽としても、勉強のためにも、いくらでも見ることができる。
それだけ充実していたとき、果たして我々はきちんと見るのか。適度な飢えや渇望も、やはり必要なのだろうと思う。