おまえは全部まちがってる!
前から思っていたんだが、この際だから言ってしまう。
おまえは全部まちがっている。
近道だと思って、右の角を曲がったせいで、倍の時間がかかっている。
まっすぐ進めば何の問題もなかったのに。
何かを恐れて、迂回して、安全だったか?
そうだろ。むしろ遠回りになってたぞ。そのうえ、平和でもなかったし、安定することもなく、あるのは焦燥感だけだっただろ。
本当に欲しいものを欲しがらなければ傷つくことはないと安直に考えていただろ。
おまえは、全然欲しくないものを欲しがるふりをしているうちに、本当に欲しくなってしまった。でも、手に入らないことがわかって、失望した。
結局、欲しくないものが手に入らなくても、がっかりしているではないか。
わかるか。欲しくないものを欲しがるふりをしたところから、まちがっているんだ。
そもそものはじまりは、本当に欲しいものをカムフラージュするために、ほかのものを欲しがった。その韜晦癖と自意識過剰を何とかしろ。
ほかのものを欲しがっている時間を本当に欲しいものに注いでいれば、今、もっと違う場所、別の場所に行けたんじゃないのか。
うんうん、失敗して野垂れ死にをしていたかもしれない?
わかる、わかる。何かに専心してうまくいったとは限らない。逃げ道が必要だった。おまえの言いたいことはわかる。
でも、おまえは本当に欲しかったもののことばかり、考えているではないか。
そのうえ、いつか自分は本気を出して、いつか自分は痺れを切らして、本腰を入れてやると思っているだろ。
甘い、甘すぎるぞ。
時間は過ぎる。おまえは老いて、体力は落ち、集中力は失われる。
欲しいものを欲望する情念も、もう少しで失われるぞ。
やるやると言って、やらない同僚の仕事のしりぬぐいをしていたんだから、わかるだろ。やらない奴はやらないんだ。
いいか、もう一度、確認するぞ。おまえが欲しいものは何なんだ。
そうだろ、それが欲しかったんだろ。
それが欲しいなら、欲しいことを隠すな。宣言はしなくてもいい。自分に嘘をついて遠ざけてごまかすことをやめるんだ。
直視して、対峙して、立ち向かえ。
おまえが闘うのは、おまえなんだ。
他人は関係ない。ずっと前からそうだと知っていただろ。
知っていたのに、人と比べて、それを言い訳にしていた。
運のなさを、才能のなさを、愛に恵まれなかった自分の不遇を。
おまえは楽をしようとして、むしろ、自分を追い込んでいるではないか。急勾配の砂利とぬかるみの険しく、危ない坂を歩き続け、中途で立ち尽くしている。
もっと考えろ。楽をしようとするな。
成功するために、正攻法のずるをしろ。もっと馬鹿になれ。知ったかぶりせず、知らないことを知らないと言え。わからないことをわかった気にならないで、いちいち考えろ。
いいか、おまえは全部まちがってる。
まずはそれを認めて、逃げることをやめるんだ。
頑張って努力したのに、失敗して、落胆するのは嫌だ?
おまえは、頑張らずに今何をやってる?
そうだ。どうでもいいことに、時間を使いまくってるだろ。反省しろ。
何かをなすには、面倒くさいことが面倒くさくならないように工夫をしろ。自分が動きやすいように、自分のために環境を整えてやれ。面倒くさいのはわかってる。面倒くさいという前提は変えず、面倒くさいなかでやれるよう仕組みを作るんだ。
え、それが一番、面倒くさい?
いいか、「欲しがりません。勝つまでは」って戦前の言葉があったが、おまえの場合は逆なんだ。
勝つまで欲しがれ。衝動をキープしろ。自分を焚き付けろ。薪をくべ続けろ。
やらない言い訳を考える時間に、やれ!
金曜日まで頑張ったご褒美にパフェを食べていたら、上記のようなことを考えてしまったので書き残しておきます。ときどき、自分に説教されます。