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「くすみカラー」を考えた人は天才

ここのところ、わたしは世の中の天才に気づいてばかりいる。

「くすみカラー」という言葉をはじめて聞いたとき、その逆転の発想に驚いた。

「くすみカラー」とは彩度が低く、くすみを含んだグレイッシュな色合いのことを指します。「ニュアンスカラー」「ダスティカラー」「スモーキーカラー」とも呼ばれ、これらはすべてくすみカラーのことです。落ち着いた色合いなので大人っぽいコーデや洗練されたコーデを演出することができるカラーです。

https://www.nissen.co.jp/s/ladies/article/SL21SU144/

「ニュアンスカラー」と「スモーキーカラー」は、ネガティブな要素をカタカナで隠蔽しようとして、隠しきれていない感じがする。

「くすむ」という動詞の意味は以下の通り。

くす・む [動マ五(四)]
1 黒ずんだ渋い色になる。または、すすけたようなさえない色になる。「—・んだ茶色」
2 目立たない地味なようすになる。「—・んだ存在」
3 生気を失う。もの思いに沈む。「暗く—・んだ顔つき」
4 不愛想に振る舞う。しかつめらしくする。

https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E3%81%8F%E3%81%99%E3%82%80/

化粧品には「顔のくすみが気になるあなたに!」みたいなキャッチフレーズはいまだに使われている。顔のくすみってのは、顔色の悪さ、冴えない状態であることを意味している。

冴えない色、とどのつまり、発色の悪さを「くすみカラー」と名付け、肯定的なニュアンスを与えることに成功している。ネーミングによって、概念を変えて、ユニクロとかの、なんだかださい色、という印象を一新させている。

(わたしはユニクロのヘビーユーザーで、ユニクロの微妙な色の服はずっと着ているので、ディスる意図はないが、微妙な色だと思って着ていることは確か)

しかしだね、デパートの高級ブランドの服を見てほしい。それらの服はまったくくすんでいない。色鮮やかで、染色に金がかかっていることが一目でわかる。高級ブランドは、くすみカラーをおそらく取り入れていない。やっぱり、パターンや素材だけでなく、発色の美しさでも、商売しているのだと思う。わたしは十代の頃から、高い服は色がきれいだと思っていて、それは見当違いでもないだろう。

いつも、お金はないので、無難に、白、黒、グレーあたりの服ばかりを選ぶようになり、なんとも味気ないが、まとまりはいいし、仕事にも行ける服ではある。

くすみカラーは、若干、主張が弱い感じもするので、先日、あまり考えずにトップスやボトムスにそれらの色合いの服を買ってしまっていた。

ある日、運動するために寝ぼけたまま着替えて、トップスがくすんだグリーンで、ボトムスがラベンダー色を組み合わせていた。鏡に映る自分は、なんだか、志茂田景樹的なニュアンスを感じさせる装いをしていた。

くすみカラーを適当に組み合わせると、こう失敗する! みたいなNG例であった。くすみカラーには黒とか白とかを組み合わせないと、ぼやけているうえに、微妙に派手みたいなことになる。

いつになったら川久保玲の服を着られるようになるのだろう。この調子だと来世っぽい。わたしはファッションを理解していないので、ユニクロのくすみカラーで意図せず志茂田景樹みを出してしまうのだ。でも、休みの日ぐらい、へんちくりんな格好したっていいじゃない、とも思う。

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佐藤芽衣
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