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映画『オールド(原題:OLD)』(2021)の感想

M・ナイト・シャマラン監督の『オールド OLD』を映画館で観てきた。

(緊急事態宣言中は行くのを控えていたのだが、公開が終わってしまったら困ると思って行ってしまった)

監督の娘さんがプレゼントしてくれたフランスのコミック『SANDCASTLE(砂の城)』が原作だという。

正直、シャマラン監督は得意ではなかったのだけれど、映画のテーマが「老い」と「時間」だと聞き、ぜひ観たいと思った。

ある四人家族がリゾートビーチにバカンスへ行き、ある浜辺に閉じ込められ、ものすごいスピードで、子どもは成長し、大人は老いていく。

夫婦は、この旅を最後のいい思い出にして、離婚するつもりでいる。過去を調査する博物館の学芸員の妻、統計的に人の死因などの予測をする保険数理士の夫が、対比的に置かれている。妻は過去、夫は未来であるが、ことはそう単純ではない。老いに脅え急ぐのは妻で、過去を肯定し現状維持を選択しようとする夫も、同時に描いている。

過去に囚われている人、遠い未来を案じている人は、別人ではない。一人の人間の中に過去と未来があり、多くの時間が奪われる。わたしたちはいつも「今」をないがしろにしてしまう。

「今」に集中することは、どうしてこんなにも難しいのだろうか。

「老いる」とは、当たり前に持っていた能力を失っていく過程だ。映画の中でも、夫は目が見えなくなり、妻は耳が聞こえなくなっていく。彼らはそれをきちんと自覚する。老いることを恐れ、人は何かを急ぐ。それは仕事であったり、結婚であったり、妊娠であったりする。その年齢のときにしか手に入らないものがあると、みな知っており、未来のために急ぐ。もちろん、急がなければならないこともある。美しくなければ結婚できないかもしれないし、若くなければ出産できない、と女性の時間は、どこか切迫感がある。

この映画でも、妻は決断を急ぎ、夫は事実を見て見ぬふりをして先延ばししようとしていたことが明らかになる。

本当は、それほど急ぐ必要はないのだと思う。「今」を生きていて、そこに訪れたものを受け取ることができれば、それでいいはずなのに、みんな先回りをしたり、過去を美化したりすることに忙しい。「今」の積み重ねが過去になり、絶え間なく訪れる「今」が未来なのだ。

最後に夫婦は、時間の流れに身を任せ、ともに死を受け入れる。その姿はごく自然で穏やかで、子どもたちに見守られながら、という理想的なものだった。そこで救われるような気持ちになった。

シャマラン監督は時間について、インタビューで以下のように答えている。

シャマラン監督:最近、時間についてよく考えるんです。20代って時間のことを考えたりしないですよね。何を達成しなきゃいけないとか、これからどうなっていくのかというのをとても心配している。私は今、ちょうど真ん中にいると思います。子どもたちが大きくなり、親が年老いてきて、自分をどうにかしなきゃとか、これからどうなるのかということにすごくおびえているわけではない。死ぬことがすごく怖いということもない。そういう意味では、すごくいい場所にいると思います。
クランクインより引用

わたしは、まだまだ焦燥感に襲われたりするのだが、微調整していきたい。

そして、驚きなのは、監督が自腹で製作している、という事実である。

シャマラン監督:フィルムでの撮影は本当に大変だったんです。狂気の沙汰でした! さらに製作費を自分で出しているので、周りからは気が狂ったんじゃないかと思われました(笑)
クランクインより引用

エンドロールには、コロナ対策のお医者さんや法務担当者の名前もあった。

どうせ朽ち果てるこの身を十二分に楽しむことができたら、と改めて思った。

ちなみに、ジャック・ニコルソンとマーロン・ブランドが共演している映画は『ミズーリ・ブレイク』である。

なぜ、作中で引用されているのか、まだよくわかっていない。わかったら追記しようと思う。

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佐藤芽衣
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