ハーヴェストムーン(上弦)
9/2
わたしの会社は、個人の関係が希薄で、
なぜかわからないけど、みんな仲良くなりきれない。個人的な話を全くしない。
「踏み込まない」ということを意識的にやると、逆に今見えているものすべてを把握するようになる。
左隣に座っている女性の先輩は、マスクの端っこにぐんまちゃんがプリントされている。
かわいい。
右隣に座っている女性の先輩は、くるくる回る椅子にこっそりあぐらをかいて仕事している。
バランス、保つの大変そうと思う。
いつも爪にオイルを塗ったり、眠ったり、ネットで推しのライブを調べたりしている。
たぶんわたしも、一人一人に思われている、めいさんっていつも居眠りしてるなとか、変なお菓子食べてるなとか、今日はすっぴんだなとか。
みんながみんなに気を遣い合っている。
少しさびしいやさしさ。変な会社。
9/5
風邪が続いていて、もう一週間も断末魔のような咳をオフィスに響かせている。
皆様の、はやく帰ってくれよというお気持ちがしゃぼん玉に包まれて浮かんだり静かにはじけたりしている。
9/6 ナミビアの砂漠の公開日だったけれど、新宿を抜けて、吉祥寺のルノワールに向かいました。
コーラにレモンが一切れ入っていて、夏だった わたしの飲み物には女の子の髪飾りみたいなさくらんぼが乗っていた。
頃合いになって、井の頭公園に出て少ない花火をした、真夏のピークは去っていて、きっと最後の花火だった、
ドンキの線香花火はわたしたちには易しくて、落ちないで消えた。
全部。
わたしの見ている景色がほんの一部でも変わらないといいなと思いました
9/7
デートみたいなお出かけをしたんだけど、久しぶりに、はいこれはデートですからね~みたいな呼吸をしないひとだったので気が楽だった。
エスカレーターは、一段空けて乗る。
荷物が軽いとお出かけって疲れないというのを実感した、カメラはいつも重いので非常に悩みどころである。
ある話題を振られた時それはもうにこにこしてしまって、
わたし、この話題を誰かに話したくてしかたなかったんだと知った。
知らない展示のチケットをもらった。チケットってもらうと嬉しい。わたしだけかな。
9/11
朝の電車で、すごく美しく汗をかくひとがいた。
汗の粒が頬にぽつ、ぽつと丁寧にのって、わたしはあんなにきれいな汗をみたことがない。
彼女もどこか涼しそうだった。汗はしばらく拭かれることなく光っていた。
涙だったのかもしれない。
9/12
好きな人の名前や、好きな人の書いた文章が好きだ。
そういう意味では、わたしは本を読むが好きというよりはからだからあふれる文字そのものが好きなんだと思う。
朝出勤して、パソコンで業務ツールを一通り立ち上げた後、
インターネットでnoteも開いておく。小さいウィンドウで。
業務の合間に、好きな人の書いた文章を何度も読み返している。
うたみたいだ、
すべてにリズムがあって、なんだか馴染むのだ。
いつかこの感覚を表現したくて、
今は好きな人の記事の返歌みたいなことができればいいな、とぼんやり考えたりしている。