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ぼくら雨をきってきらきら走る
転職活動を始めて、2ヶ月が経った。転職を諦めることにした。
わたしは何か一つに集中的に取り組むことが苦手だ。好奇心旺盛な性格で、趣味がたくさんある。自分の好きなことを満遍なくやって、心を分散させることがわたしの生活の楽しみ方だった。
それは裏を返せば、臆病だからだとも言える。高校の時、部活を二つ掛け持ちしていた。どちらも興味があったことには間違いないが、一つに絞って取り組んで結果が出なかった時のことを考えると怖かった。
だから、一つのことを頑張ったという経験が無い。それゆえに、わたしの人生には大した成功経験も、失敗経験も生まれない。
そんな中で、転職活動は唯一自分から「今はこれを集中的に頑張ろう」と思えた決断だった。
新卒の時にしっかりと就職活動をしてこなかったわたしにとって企業を調べたり面接対策をすることはかなり骨が折れる作業だった。その上面接は想像以上に難しく、自分の言いたいことが全く伝わらない時も、手応えなく面接を通過して素直に喜べない時もあった。
なかなか内定が出ず、今まで堰き止められていたものが何のきっかけもなく体内に溢れ出してしまった時は本当にびっくりした。
これはいかん、いかんなと思っても自律神経というのは自らコントロールできないものだ。
わたしは、したくないことをするために乗りたくない満員電車に乗る生活を繰り返すサラリーマンを馬鹿にしているふしがあった。自分で会社を起こしたり、フリーターとしてアルバイトをしつつ自分の夢に向かっている人間の方がよほど楽しそうだし、見ていてわくわくする。新卒で一般社会人になったものの、わたしは世のサラリーマンみたいに面白くない生き方はしないぞとどこかで思っていた。
思えば、いつも みんなとは違うわたしを探していて、みんなとは違う部分が、わたしが好きな「わたし」だった。
心の向くままに動くのが、自分らしさだと思うから。
だからすごく悔しかった。転職を諦めてこの先普通の会社員として「普通」に生活していくことも。自ら決めて頑張りたいと思ったことが上手くいかなかったというのも。
今回心身を崩して、本当にびっくりして、思わず周りの人たちににどうすればいいか聞いて回った。こういう時溜め込まないで相談しまくることができる性格であったのが、唯一の救いかもしれない。
そこでいろんな話を聞いてもらって、聞かせてもらって何となくわかったことがある。
心の向くままに動くだけで、人生はカバーできないのだということ。
それが人生の厳しさだ、と言いたいのではなくて、「そうじゃない」方に身を置いている期間があっても、人生は十分楽しいということだ。
多くの人が通る道を飛び出すことが人生の挑戦だと思っていた。だから、身の回りにあることに対して丁寧に向き合うことや、ささやかな芽に対して目を向けていなかったのかもしれない。
我慢すれば身になるかもしれなくてならないかもしれなくて、辞め時なんて誰にもわからないのだ。
生きていくことは、正解をつくっていくことなんだろうか。
わたしは普通の会社員として、明日も電車に乗ると決めた。
わたしはこれを、面白くない選択だとは思わない。
わたしはいつだって、今の自分の選択に納得していたい。
自信はなくても自分の足で踏み出したい。
それくらいのことはしたい。
土砂降りの日に、大きい橋を渡って家に帰った。
誰も歩いていなくて、車の光が眩しかった。橋の下では黒い濁流がどろどろと流れていて、風が吹いて、靴の中はじゃぶじゃぶと音をたてた。
どんどんわたしになっていく。
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