スケボーとエスプレッソとタイピング
職場の先輩から突然の電話がかかってきた。
仕事でなにかあったのかとおもってツーコールで出ると、
「元気かー」って大したことのない電話。
さほど用事もその人にはなかったけれど、
久しぶりに話したのが嬉しくてなんだか切りたくなかった。
先輩もそうだったのか、
なんだかなんだ3時間ほど話した。
自宅勤務が続いてるから、
普段何してるの?とか、
ご飯どうしてるの?とかたわいもない話。
私も彼もコーヒーが好きだから、
お互いの好きなコーヒーの紹介もした。
2人ともエスプレッソ派で、ラテが好きだから
エスプレッソマシンも欲しいなーなんて話も。
その後は体動かしたいねーなんて話題になって、
スケボーが欲しいとポツリ呟いてみると、
彼はもともとやっていたらしく、おすすめを教えてくれた。
ここなら2人とも近いから教えてあげるよなんて、スケボーパークを探しながらいつ来るかわからない未来の休日の話もした。
それでもやはりお互いの頭によぎるのはこれからの仕事の話。
なにかほかにスキルを身につけなきゃねって言いながら、
私はイラストと脈絡のない日記を書き続けている。
そんな中彼はプログラミングを始めたと言っていた。
大学時代授業で学んでいた私はなんだか懐かしい気持ちになってその話に相槌を打っていた。
タイピングのテストが当時あったことを思い出し、
久しぶりにスピードを測ってみた。
やはりそのときの力は衰退しながらも依然として残っており、
彼のスピードを遥かに超える結果となった。
悔しかったのか10回ほど一緒にやったが全て私の勝ちだった。
もう夜も深かったので、
私は布団に入りながら彼がプログラミングに格闘する音を聞いていた。
時折聞こえる独り言とキーボードの音が心地よくうとうとしていると、
彼がおやすみとこちらの存在に気付いてくれて優しく電話を切ってくれた。
何気ない日常を共に過ごせることがどんなに幸せなことか。
お互いまったく別のことをしながらも
互いの存在や音を認知し続けることが
どんなに安心できることなのか、気がついた。
そこには好きとか嫌いとかという感情はなく、
人間の温もりをオンラインながらにも感じることができたのだ。
あるべき姿的な。
その人の存在を頭で認識して
ふとしたときに連絡できる存在って何人いるだろうか。
無音さえも愛おしいと思える間柄の人間が何人いるだろうか。
せまくふかくをモットーに生きてきた私にとって
昨晩の数時間はスモーキーであったかいラテのような時間だった。
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