見出し画像

妊娠19週 せつが教えてくれること【6】

記録と自分の気持ちの整理のために、書かせてください。

退院し、三人でおうちに帰った私たちのもとに母親が駆けつけた。
かぼちゃの煮物と餃子とサラダを持って来てくれた。

そして、赤ちゃんに、と立派ないちごをくれた。
母は、せつを見て涙を流し、「また二人のところに来てね、待ってるからね。次に来たときは一緒にいちご狩りに行こうね」と声をかけた。

翌日、産後の私は家から出ずに過ごした。
明日で本当にお別れだと思うと、何度も涙が出た。

その夜、小さな棺の中が寂しくないように、シールを貼ってかわいいお部屋にした。
天井には読めるようにメッセージを書いた。
手紙を書くのが苦手な夫、俺も書くと言い、自らペンを握った。
私も「ママとパパにしてくれてありがとう、大好きだよ」と綴った。
泣きながら、感謝しながら、シールをたくさん貼った。

翌日、葬儀の日。
準備を終えた私たちは、もう一度棺を開けて、その中をお花で彩った。
母のくれたいちごも切って入れた。
いい香りに包まれ、せつは嬉しそうに見えた。

前日までの大雪とは打って変わり、雲は残りつつも空は青かった。
葬儀場に着き、私の両親と合流した。
父は今回のことを母から聞き、私になんと言葉をかけたらいいかわからず、ずっと連絡できなかったのだと、後に母から聞いた。
出産当日の朝に一言、「身体大丈夫か?」とLINEが来たが、会うのはこのことがあってから初めてだった。

その父が、私の元に来て、「つらかったな」とだけ言って抱きしめてくれた。

母も父も、孫を失ったことはもちろん悲しいと思う。
でも、我が子である私が悲しんでいる姿を見るのが、何よりもつらいのだろう。

四人で、せつと最後のお別れをした。
せつが寂しくないように、母がドキンちゃんのぬいぐるみを一緒に置いてくれた。

私は、ずっとうちの冷蔵庫にいてほしいと思った。
一度も抱けなくても、声が聞けなくても、この身体があるなら。存在してくれるなら。
いなくならないでほしい。
まだ会えて3日なのに。

悲しくて悲しくて、また、頭の代わりに棺を何度も撫でた。


週数の少ない胎児の場合、お骨が残るかわからないと言われていたが、せつは小さな骨をたくさん残してくれた。
全部大切にしまい、一緒におうちへ帰った。

これからも、せつは私たちの中にいる。
せつが来てくれなきゃ、わからなかったことがたくさんある。
ゆっくり想ったり、書いたりして、前に進むよ。

ママにしてくれてありがとう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?