妊娠19週 せつが教えてくれること【4】
記録と自分の気持ちの整理のために、書かせてください。
入院三日目。今年初の積雪の日。
おなかの痛みは朝方には少し弱まり、朝食も完食した。
しばらくすると、病室に先生が突然の訪問。
そしてまさかのその場で処置。
陣痛促進剤が入れられた。
「破水したり何かあったらナースコールくださいね」と言われ、まだ残るおなかの痛みを感じながらベッドの上で本を読んだ。
なんかオナラが出そうかも…と思っていたら、
パンっっっ!
ものすごく大量の水が出た。
それはもう、大量の。
ナプキンどころの話ではない。
想像の破水と違いすぎる。
呆然としながらナースコールを押す。
すぐに駆けつけてくれた看護師さんに、されるがままに身ぐるみ剥がされ着替えが終わり。
シーツもあっという間に新しいものに変わり。
あまりのスピーディーさにびっくりした。
「陣痛が来ると思いますが、痛みが弱まってきたらお産が進んでる合図ですから、また呼んでくださいね」と言い、看護師さんは颯爽と戻って行った。
ベッドで点滴をしながら痛みに耐えた。
そうしているうちにも、水がまだまだ出た。
少しすると、何かが出て来そうな感覚がした。
また水かもしれない、でも、赤ちゃんだったらどうしよう、、
初めてのことすぎて、感覚がわからない。
部屋がノックされ、看護師さんが来た。
状況を伝えると、「出血が多いので、分娩室に行っちゃいましょう!」と。
あれよあれよとお産の体勢になった。
あぁ、もう今から産むんだ、早かったな。
と思いながら、言われるがままにがんばった。
力を入れたり、抜いたり、呼吸したり。
おなかをグイグイ押されて、器具を入れて子宮の中を掻き出す処置が痛すぎて、最後は痛いと言いながらひたすら耐えた。
手足が冷たくなり、痺れ、震え、歯がガチガチと鳴った。
処置が終わり、先生が赤ちゃんの状態を教えてくれた。
「臍の緒がグルグルに絡まっていてね、」と言っている気がしたが、意識が朦朧としていてあまり聞こえなかった。
横でずっと声をかけ続けてくれた看護師さんが、「終わりましたよ、赤ちゃん産まれたよ、がんばったね」と言ってくれた瞬間、涙が出て止まらなくなった。
出てきてくれてありがとう。
選んでくれてありがとう。
産ませてくれてありがとう。
元気で会いたかった。
声を聞きたかった。
抱っこしたかった。
いろんな想いのこもった涙だった。
病室まで車椅子で戻り、ベッドに入り、ガタガタ震えながら泣いた。
ずっと泣いた。
LINEで連絡した夫はすぐに駆けつけてくれて、私を抱きしめて、「ありがとう、がんばってくれてありがとう」と何度も言ってくれた。
二人でひとしきり泣くと、随分落ち着いた。
看護師さんに借りた電気毛布のおかげで、寒さも徐々に和らいできた。
しばらく二人で話していると、先生が赤ちゃんの状況を説明しに来てくれた。
「赤ちゃんとお母さんを繋ぐ臍の緒が過剰にねじれてしまって、血液や栄養が行かなくなってしまったんです」
そう言って見せてくれた写真には、ねじれてギュッと細くなった臍の緒が写っていた。
赤ちゃんに絡まっていたわけではなかったんだ、と安心した。
「赤ちゃん、おなかの中でグルグルと回りすぎちゃったんですね、元気すぎたんですね」と先生は話した。
そうか、元気だったんだ。
やんちゃだったのかな。
それから、看護師さんが赤ちゃんを病室まで連れてきてくれた。
小さな箱に入った赤ちゃんは、4Dエコーで見たそのまま。
小さな手を重ね、細い足を絡ませ、目を閉じてそこに眠っていた。
かわいい。
鼻も口も耳も、肋骨もたしかにあり、しっかりと成長していたんだなと思う。
やっぱり、元気で会いたかった。
触れると壊れてしまいそうで、頭の代わりに箱を何度も撫でた。
夫は一旦帰り、二度目の面会のときにはアイスを買ってきてくれた。
明治のプレミアムアイス。
夫はバニラで私はチョコ。
クレープとプリンも買ってきてくれて、母に続き、私を太らせにかかってる。
でも、元気になってほしいという気持ちが伝わってきて、嬉しかった。