若手俳優のトヴィノー・トーマスの名前からわかるマラヤーラム語の文字体系
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マラヤーラム語のスーパーヒーロー映画「ライトニング・ムラリ」(原名:ミンナル・ムラリ)はご存知ですか。今日はその映画の俳優トヴィノー・トーマス(Tovino Thomas)の名前からわかるマラヤーラム語の文字の特徴についてお話ししたいと思います。
ご存知の方も多いとは思いますが、マラヤーラム語の文字は、日本語の仮名(ひらがな・カタカナ)のように、ひとつひとつの文字が音節を表す文字体系(音節文字)と違って、子音の前後に母音の記号を装飾することによって表記します。このような文字体系のことを音素文字と言います。東南アジアやインド亜大陸の諸言語の多くはマラヤーラム語と同じく音素文字になっています。
さて、本題に入りますが、「ライトニング・ムラリ」の主人公のムラリ役を演じる若手俳優のトヴィノー・トーマス(Tovino Thomas)の名前は、マラヤーラム語の文字で次のように書きます。
トヴィノー・トーマスの名前の表記で、マラヤーラム語の文字体系についてどんなことがわかるでしょう。まず、共通点ですが、日本語と同じく横書きの場合、左から右に書きます。
その一方、先ほど述べた通り、日本語の仮名には子音と母音が一体になっているのに対して、マラヤーラム語の場合、子音に母音の記号を付け加える必要があります。つまり、「ta」を「to」に、「va」を「vi」に、または、逆に「Thomas」の最後の音素の「s」を表記するために、「sa」の母音を消して「s」にするためなど、一つ一つの子音に記号をつけなければなりません。
一見めんどくさいと思われるかもしれませんが、記号を使うことで面白くて多様な音を表記することができます。さて、一つ一つの子音に記号をつけて、俳優のトヴィノー・トーマスの名前を書くと、次のようになります。
では、文字をひとつずつみてみましょう。
まず、「ṭovinō thōmas」の「ṭa」の子音に母音の「o」を表すために、子音のまわりに「ൊ」を付け加えました。
次、「ṭovinō thōmas」の「va」に母音の「i」は、子音の後ろに「ി 」を付け加えた。
次、「ṭovinō thōmas」の三つ目と四つ目の音は同じ原理なので、「na」と「ta」を長音を表す「ോ」で装飾する。
また、「ṭovinō thōmas」の「ma」はそのまま使えるので、最後の「sa」を「s」にするために、母音を取り消す「്」を付け加えます。
このように、「ライトニング・ムラリ」(原名:ミンナル・ムラリ)の俳優トヴィノー・トーマスの名前が教えてくれるマラヤーラム語の文字体系をまとめると以下の3点になります。
横書きの場合、日本語と同じく左から右に書きます。
日本語と違って、マラヤーラム語には「た」行の音が2種類あります。名前と名字の頭文字をみてみてください。
ひとつひとつの文字が音節を表す文字体系(音節文字)と違って、マラヤーラム語は、音素文字で、子音の前後に母音の記号を装飾することによって表記します。
マラヤーラム語母語話者の僕に見えない日本語との共通点・相違点がまたいろいろあるかもしれないので、「ここも違う」とか「ここ似ている!」と気づいた方はぜひコメント欄で教えてください。
最後、補足になりますが、現代マラヤーラム語には15の母音と36の子音があって、仮名の46文字と比べると若干多いように思われますが、実は日本の2番目に多い名字の「すずき」は、マラヤーラム語で書けないのです。これについては、次回お話しします。
「ライトニング・ムラリ」(原名:ミンナル・ムラリ)は今Netflix Japanで今配信されているので、言語の話で疲れた方はぜひご覧ください。
マラマナって?
「マラヤーラム語を学ぼう」を僕が勝手に略したものです。マラヤーラム語はインドの最南端のケララ州の公用語で、約3800万人の母語話者がいます。