心の健康面の支援はどんな学校でも全てのこどもたちに行うべきユニバーサルなもの〈未来の学校をつくる4〉
チャレンジスクールは心の健康面の支援が充実しています
チャレンジスクールはもともと不登校の生徒の対応校として誕生した学校です。
ですから、私たちの学校も心の健康面の支援については充実した取り組みをしております。
本校の支援の取り組みは以下の3つで代表されます。(1)まず交流プログラムを実施していること。(2)次に相談の体制や問題解決の体制を充実させていること。(3)最後に心を支える場所や居心地のいい場所があることの3つです。
これからその3つについて、お話ししていきます。
(1)交流プログラムを実施しています
人と人との交流をしやすくするためのプログラムを入学後の早い時期に、学校の教育活動を横断して実施します。
5月の始めに実施する校外学習は交流プログラムの一環です。この交流プログラムは、本校の特色の一つです。
たとえば、難しそうなやりとりの場面での対応や、怒りなどの強い感情をマネジメントする方法を体験的に身に付けます。
また、ストレスについて理解し、ストレスと共に生きるスキルを身に付け、レジリエンスを向上させます。
聞き手としてのスキルを身に付け、プレゼンテーションの技術を身に付け、人前で話す技術を身に付け、様々な問題を話し合うためのファシリテーターの技術を身に付けます。
また、授業内での学びの点では「チャレンジスクール指定科目」があります。チャレンジスクールでは、家庭生活・社会生活における自立や、体験活動を通して社会性の育成を図るため、「チャレンジスクール指定科目」を設置することとなっています。
自立心や社会性や豊かな人間性の育成を図るための科目です。
本校では、課題研究を作成する「ゼミナール」を「チャレンジ指定科目」としています。
課題研究を作成する上で、外部の連携先とのやり取りや発表の機会で礼儀作法やマナーを身に付けることができ、人間関係能力や課題対応能力といった幅広い学力の形成に役立つからです。
(2)相談体制や問題解決体制も充実しています
学校の仕組みとして相談の体制や問題解決の体制を充実させているのも、チャレンジスクールならではの特徴です。
高校生は、日常の不安や進路の迷いや対人関係の困難などで、先生方に相談したいと思うことが多いと思います。
そんなときには、クラス担任の先生、ゼミ担任の先生、教科担当の先生、部活動の先生、学習・進路支援担当の先生、保健室の先生がそれぞれの分野の相談担当ですので、気軽に相談してみましょう。
特に、クラス担任とゼミ担任は生活支援と学習・進路支援の両輪となり、すべての生徒がクラスとゼミの2方向の担任から支援を受ける体制になります。
専門家による支援体制については、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカー(東京都ではユースソーシャルワーカーという名称になっています)が複数配置されています。
スクールカウンセラーの先生には、個別のカウンセリングを行って専門的な見地から助言をいただいたり、入学時の全員面接や講演をしたりしていただいています。
スクールソーシャルワーカーの方は、教育分野に関する知識に加えて、社会福祉等の専門的な知識・技術を用いて、困っている生徒が置かれた様々な環境に働きかけたり、関係機関等とのネットワークを活用したりして福祉的な支援をされています。
問題解決の組織体制としては、生徒の生活面の支援をする分掌を設置し、毎週1回教育相談の関係者の会議を開催して情報を交換しています。また、教育委員会と連携してSOSの出し方教育や構成的グループエンカウンターを実施し、教育相談センターとも連携を深めています。
他の都立高校同様、福祉・医療・消防・警察などの地域関係機関や保護者などと学校運営連絡協議会を開催し、いじめや暴力・自殺などが起こらないように情報交換をしています。
(3)心を支えてくれる場所や居心地の良い居場所があります
本校は、心を支える場所や居心地のいい場所をたくさん作ります。
新校舎ではカウンセリング室、相談室は将来のことや人間関係など様々な悩みや迷いについて相談する空間で、専門家による助言を入れて、扉の形やテーブルや椅子などにも気を配って相談しやすい環境を作ります。
保健室は、怪我や体調不良を回復する場所ですが、メンタルの不調についてもアドバイスをもらえる空間です。
職員室はオープンスペースになっていて、先生方が身近に感じられる作りになっています。職員室隣の進路支援エリアでは、個別の相談カウンターを設けて相談がしやすいようにするほか、会話が漏れにくいミーティングコーナーも設置します。
ゼミ室は学びの場であると同時に、居心地の良い居場所の機能を持ちます。先生と親しく話したり、相談に乗ってもらったりする場所でもあります。同じ興味関心を持った先輩後輩や外部の講師の方との交流もあるでしょう。
ホームの教室はもちろん、食堂、ラーニングコモンズ、図書館、中庭のベンチなど一人で考え事をしたり、あるいは友人と話したりするのによい場所がたくさんあります。
心の健康面の支援はユニバーサルな支援です
心理学者のエリクソンによれば、およそ12歳から18歳の間は青年期とされ、アイデンティティの確立に向け、精神的な苦悩を克服していくことが青年期の発達課題だと言われます。
自分自身が何者なのか思い悩み、周りの人々や環境に影響を受けながら、だんだんと生き方を定めていく時期なのです。
このように、青年期の発達課題を考えれば、心の健康面の支援は、そもそも全ての生徒に対して必須のものだということがわかります。
そうすると本校を含めた東京都のチャレンジスクールの教育は、青年期の発達課題に正面から向き合う教育であり、すべての学校で取り組むべきユニバーサルな教育を実直に行っているのだと思うのです。