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#愛知発酵めぐり 尾張と三河のめくるめく発酵文化

発酵大国と言われる日本。全国どこに行ってもご当地の発酵食品に出会うことが出来ますが、東京にも発酵蔵/醸造所が存在することを知る人は少ないのではないでしょうか。東京に点在する発酵スポットをめぐり、その魅力を紹介します。

今回は、番外編で愛知の発酵文化をご紹介します!

皆さんこんばんは!
meguruの発酵担当よねです。

前回から始まった「TOKYO発酵めぐり」、2回目からいきなり番外編となり恐縮です。。

※前回の記事はこちら



今回の記事では、先月愛知に行き学んできた発酵文化についてご紹介したいと思います。
愛知での発酵めぐりがとっても濃く、楽しい時間で。
忘れてしまわないうちにレポートしたい!と思い、今回投稿しています。

最後までお付き合いいただけたら嬉しいです!


いざ、愛知へ!

今回の食と人をめぐる旅の目的地に選んだ愛知県。

愛知県には、みりん、豆味噌、たまり醤油、白醤油と独特の発酵文化が集結しています。また、お酢やポン酢で有名なミツカンの発祥の地でもあり、今も本社があります。

こんなに特定の地域に様々な発酵食品の蔵が集結している場所ってなかなかない!ということで今回の目的地となりました。


愛知にはめくるめく発酵文化が・・!

実際に愛知に行くまで(そして道中も)、「なぜ愛知にはここまで独特の発酵文化が集まっているんだろう・・?」という疑問がありました。

その疑問に対するわたしなりの答えは、

『いまあるものをより良く、そして無駄なく使おうとした昔の人たちの工夫と努力の結果』

というものです。

名古屋、豊田市を中心に今も栄えている愛知県ですが、発酵食品の蔵元は、南西部(岡崎市、西尾市、碧南市、半田市あたり)に集結しているように思います。

発酵地図@愛知県


今は少なくなっていますが、元々知多半島には、江戸時代初期に114件の酒蔵があったほど、酒造りが盛んな土地だったそうです。

江戸と大阪の中間にあるという地の利に加え、良質な酒米、湧き水に恵まれたことが知多半島で酒造りが盛んになった要因と言えます。

そして、日本酒と言えば切り離せないのが酒粕。

粕汁や粕漬けなどに活用も可能ですが、いかんせんお酒を作れば作るだけ酒粕もできるので、その扱いに酒蔵も頭を悩ませたのでは、、と推測できます。

まだアルコール分が残る酒粕の活用法として、酒粕から粕酢を作ったのがミツカンの創業者 初代中野又左衛門。

当時江戸で流行っていた「寿司ブーム」を追い風にし、粕酢が江戸で評判の寿司屋でも使われるようになりました。

酒造りの副産物として発生する酒粕をどうにか無駄なく活用出来ないか、と考えた知恵の結晶がミツカンの創業の理由だったんですね。

今回、是非とも「ミツカンミュージアム」に行きたかったのですが、コロナの影響で休館・・!泣く泣く訪問を諦めました。

ミツカンミュージアムを外から拝みました。。

三河みりんの起こり

碧南市内には現在5件のみりん蔵があります。戦後の最盛期には25.6件あったそうです。「三河みりん」という名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

この地でみりんが作られるようになったきっかけも、実はお酢と同じで、酒粕の活用から始まったそう。みりんの場合は、酒粕を蒸留して出来た「粕取り焼酎」を原料として使用したことが始まりだそう!!。

日本全国には、他にも昔日本酒造りが盛んだった土地はいくつもありますが、この地で酒粕を活用したお酢やみりんがここまで栄えたのは、先人達のもったいない精神、工夫する力のたまものだったのではと思いました。


今回の旅では、みりん屋さんは「小笠原味醂」さんに突撃?訪問。突然お邪魔したにも関わらず、あたたかく迎えていただき、色々なお話を伺うことが出来ました。

小笠原味醂さんでは、3種類のみりんを販売されていますが、そのうち米焼酎を使用した「一子相傳」と焼酎の代わりに醸造用アルコールを使用した「みねたから」を試飲させてくださいました。

みりんって普通はあんまりそのまま飲まないと思うのですが、原材料を厳選し、丁寧に作られたみりんはおいしく飲めるんです!

「一子相傳」はしっかりとまろやかな甘みが感じられる味わい。「みねたから」は一子相傳に比べるとすっきりとした甘みでした。


調味料界隈では、醸造用アルコールがあまりよろしく無いとされる風潮もあるかと思います。

今回印象的だったのは、「みねたから」は米焼酎ではなく醸造用アルコールを使用しているので、焼酎臭さがなくあらゆる料理に使える、という小笠原さんのコメントでした。

良い悪いではなく、それぞれの特徴を理解し、使い分けるという考え方。
みりんだけでなく、他の調味料や食材を選ぶ際にも大切な視点だと思いました。

家康にも愛された、まるや八丁味噌

愛知県と言えば、八丁味噌も有名です。

八丁味噌と聞くと,
「聞いたことはあるけど、食べたことは無いな〜。豆味噌のこと?」
と思う方が多いかもしれません。

八丁味噌の名は、愛知県岡崎市にある岡崎城から西へ八丁(約870m)の距離にある八帖町(旧八丁村)に由来しています。

今回伺った「まるや八丁味噌」さんは1337年創業なので、その歴史は先にご紹介したミツカンやみりんより古く、この地域の特色ある発酵文化の原点と言えます。

旧東海道側から眺めるまるや八丁味噌さん。

徳川家康にも愛され、彼の長寿を支えたとも言われる八丁味噌。

その名前は、この町にある「まるや八丁味噌」と「カクキュー」の2社が使用している豆味噌の商標なんですね。

写真で見ていたこの風景に思わず「わー!」と叫んでしまいました。

今回は事前に申込みをして伺ったところ、なんと社長の浅井さん自ら案内してくださいました。

この浅井さんがとても素敵な方で。
約50年前から世界に向けても輸出しており、ユダヤ教のコーシャ認証まで取っているそう。

600年の伝統をひたむきに守り続ける一方、軽やかに世界に目を向ける浅井さん。
そのあたたかい眼差しがとても印象的でした。

社長の浅井さん

究極の白醤油「しろたまり」

最後の訪問先は碧南市にある日東醸造さんです。

日東醸造さんも事前に連絡したところ、お休みにも関わらず社長の蜷川さんが対応してくださいました。

しかも、自社のことだけでなく愛知県の発酵文化から丁寧に教えてくださり。
愛知の方ってなんて優しいんだ・・!と友人と感動していました。

日東醸造さんは、大正初期から碧南の地で白醤油を作られています。
「白醤油」という言葉に馴染みの無い人には、白醤油にだしを加えた「白だし」の方が身近かもしれません。

日東醸造さんの現在の看板商品は、究極の白醤油を目指して完成した「しろたまり」です。

濃口醤油が大豆と小麦が5:5で作られるところ、料理に色を付けないために、通常の白醤油は大豆1:小麦9の割合で作られます。

ところが、「しろたまり」は究極の白醤油をめざす過程で、大豆を入れることをやめてしまいました(!)

それは先代社長の「昔の白醤油はちがう味だった気がする」という一言から始まったそうです。

そこで、原材料を一から見直し、製造方法も検討に検討を重ね、最終的には仕込水を求め、製造の地をこのしろたまりだけ県内の湧き水が出る土地に移します。

そんな、話を聞いただけでも大変そうなしろたまりの開発ストーリー。

現状に満足せず、さらに良りよいものを追い求める姿勢と、そしてそれを爽やかに軽やかに語る蜷川さんに、愛知の方の底知れぬパワーを感じずにはいられませんでした。

生まれ育った土地にも、知らない食文化がある!?

今回の発酵の旅で印象的だったのが、一緒に行った愛知出身の友人が

「地元にこんなにたくさんの発酵文化があったなんて!愛知県を見直したし、好きになった!」と言っていたこと。

その言葉を聞いて、それって誰にでも、どの地域にも当てはまるんじゃないかなとぼんやり考えました。

日本は発酵大国で、各地地域に独自の発酵文化が根付いています。
そして地域固有の在来種の野菜や、伝統の行事食や食文化も。

「ここには何もない」と嘆かずに、「他の地域にはない、”とくべつ”を探す」
そうすると見えてくるものがあるかもしれません。

そうやって地元をより愛せるようになったら。
そんな人が各地で少しでも増えたら。

衰退が嘆かれることの多い日本の食文化の未来も、捨てたものじゃないのでは、と思えます。

まだ見ぬ発酵文化に出会うべく、旅を続け、また、発信し続けたいです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

文・写真 /  米村さおり
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