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等身大の頑張り方を見つけたい。【事例インタビュー】

こんにちは。メンタルヘルスのあれこれ・大人の居場所について考える座談会などを主催しているオトナノタマリバです。今回は、「じぶんの取説対話ワーク」を体験いただいた方へお話を伺ったインタビュー記事をお届けします。

本インタビューでお話を伺ったのは、教育現場で働く鈴木香織さん(仮名)です。

■これはどんなインタビュー記事?
ついつい働くことに没入して休みを後回しにしてしまう休み下手さんが、休み上手さんへと変わるサポートをする「じぶんの取説対話ワーク」(以下、取説ワーク)。
このインタビュー企画は、取説ワークを体験した方へ「ぶっちゃけ、その後どうです?」とお話をきかせていただくというもの。
休み下手といえば、自分だわ…と思い当たる方、よかったら覗いていってくださいね。

【話し手】
仮名:鈴木 香織さん(すずき かおり) ・30代前半・女性
2023年7~8月に取説ワークを体験。
教員として働き、また二児の母でもある。
メンタル不調による休職・復職の経験はないものの、定期的に気持ちの落ち込みがあったり、疲れがたまりやすい。仕事、子育て、自分のやりたいことのバランスを考える中で、「休息」の大切さにも気がつき取説ワークに関心を持った。

【聞き手】
尾森 明実(おもり あけみ)
オトナノタマリバの運営とともに、組織づくり・人材開発などの現場でさまざまな立場のひとのお話しを聞く毎日を送っている。ひとの人生について聞く時間が大好物。
合同会社meguru HP 


昨年のテーマはまさに「休息」だった…!

尾森:鈴木さんとは、時々メッセンジャーでもやり取りをしてほんの少しだけ近況を聞かせていただいていました。でも、こうして話すのは久々ですよね。
2023年7〜8月に取説ワークを体験し、休息の取り方はどんな方法で続けていますか?

鈴木さん(以下、鈴木):去年、私が大事にしていたテーマがあって、それがまさに「休息」でした。私は、仕事が好きなので、うまく休めないタイプだなと自覚があって…。そんなわけで、取説ワークにも共感して、尾森さんとのセッションの後も、休息をちゃんと取ろうと意識を続けてました。

休みの日の「休息ルーティン」を決めるようにしてみたんですよ。昨年は水曜に自由な時間が多かったので、「水曜=休息日」にしていましたね。温泉に行って、その後近くのカフェでケーキを食べて帰るという、自分に合ったルーティンが出来ていました。

尾森:ルーティンが出来ていたんですね。インタビュー開始前の雑談でおっしゃっていましたが、今年度に入ってからは、少し状況が変わってきたのですよね?

変化とともに、休息の取り方や周辺環境も整備していく

鈴木:そうなんですよー…。2024年の3月くらいから仕事の担当領域が変わって、水曜にも仕事が入るようになりました。平日5日間は出勤、週末は自分の子供たちと一緒に過ごすので、「自分のための休息時間」が最近は思うようにとれていないんです。

実家に子供を預ける日を作ることもあるんですが、親世代にとっては、小さい子供とどう過ごしたらいいかわからないという心境もあるようなんですよね。なので、頻繁に預けることまでは出来ていない状況です。その影響で、今年(2024年)の4月から7月までは、自分の容量がいっぱいになっている感覚でした。自分のための時間というと、スマホのゲームをするくらいしか元気がない時もありました。

尾森:そうでしたか。お仕事の状況にも変化があり、休息ルーティンを実践しづらい状況が起こっているのですね。どんな休息を取るのかも大事だけど、休息が取れるように「自分の周辺の環境づくり」も関わってきますよね。

鈴木:そうなんですよねぇ。今は、教員という職業柄、夏休みに入って。学校があるときは、毎日、次の日の授業に向けてやることに追われている感覚なんですが…。休み期間はそれがなくなり、脳が休まっているなぁという感覚があります。

ストレス要因を振り返り、自分に合った休息方法を編み出した

尾森:水曜日の休息ルーティンについて、もう少し聞きたいです。どのようなきっかけから、「自分にはルーティンがあった方がいい」と気づいたのでしょうか?

鈴木:自分にとってストレスの一つが、「リズムが崩れること」自体だなと常々思っていたんです。それで、私にはルーティンであるとか、一定のリズムがあることが大事かもしれないと気づきました。
学校で働いているとある一定の休み(ゴールデンウィーク、夏休みなど)が時々あるじゃないですか。私はそれを「苦手だなぁ」と感じていました。そういう休みになるとリズムが崩れ、自分の状態も崩れてしまうことが多かったんです。

あと、誰かが出かけている様子をSNSで見かけて、「外出して充実した時間を過ごさなければいけない」かのような錯覚に陥ることもありました。

そういった気づきから、今年の夏休みは、今までと違う時間の過ごし方をしてみようと思って。今年の夏休み中は、学校に一切行かないのではなく、ある程度9〜17時は学校にいるようチャレンジしてみているんです。
朝、普通に起きて、同じリズムで学校に行く。でも、授業はないので、かわりに、なかなか終わらなかった仕事を進めることができる。

尾森:そうなんですね。前々から、日常のリズムが変わった時に、自分の状態にも影響が出ることに気づいていたのですね。

鈴木:そうですね。家にいて、ダラダラとした時間を過ごして、罪悪感を感じてしまうこともありますしね。

尾森:今のお話は、個人的に共感しますねぇ…。「日々、行く場所がある」ことは、しんどいときもあるけど、それが自分の生活の構造を作ってくれるとも言えますよね。
対話ワークをやる前と後で、休み上手になってきた感覚や休み方の引き出しが増えた感覚はあるでしょうか?仕事のスケジュールが変わり、あらためて模索中ではあると思いますが。

鈴木:料理や、車の移動時間なども自分にとって休息の時間になりうるんだなと思えるようになりました。オフのバリエーションを意識するようになったんだと思います。
最近休みが取りづらくなっているのは…なんとかしなきゃですね。でも、私にとって大事な学びになった「自分のことを伝える」ワークのことは、今でも時々思い出して使うようにしていますよ。

尾森:本当ですか!鈴木さんにとって、コミュニケーション(自分の状態をいかに他者に伝えるか)は、引き続き大切なテーマなんですね。

じぶんの取説ワークはこの図の設計となっており、コミュニケーションについても学ぶ

心身の状態について話す場所を複数持てるようになった

尾森:あと、働いていらっしゃる教育現場のメンタルヘルスへの対策状況についても聞いてみたいです。
鈴木さんは元々、誰かとメンタルヘルスについて話すことにはそこまで抵抗感がないとおっしゃっていました。普段は、誰とメンタルヘルスについて話す機会がありますか?

鈴木:メンタルヘルスについては、同性の先生と話す機会がありますね。男性の先生とは話さないです。男性と女性では基礎体力が違ったりもするから、あまり話す機会がないのかな。

女性の同僚とは、対処方法まではいかないけどちょっとしたガス抜きをしあってます。「鉄分が足りていなくて貧血気味で」みたいに、自分のコンディションのことを話すイメージです。

尾森:私は今30代前半なのですが、ここ数年で、一人ひとりの体力の総量には違いがあるという前提について考えることが多くなりました。女性、男性によって体の作りが違うことも。
この前提を念頭におくと、速いスピードで長時間走ることができる人と同じ走り方をしようとしてはダメなんだなぁと思いますね。
憧れるのはいいけれど、他人になろうとしない方がいいな、と。仕事へのエネルギーのかけ方や、長〜い人生というマラソンの走り方は人それぞれ。

鈴木:そうですよね。私自身、子供を二人抱えて、女性として生きる中で、ふと、「男性だったらよかったな」と思うことがあります。男性の先生でもより休みが必要な方もいるでしょうけれど、体力も、気力も、時間も、人それぞれ一定の限界がある。

人それぞれのバランスがあるよねと違いを認め合うような職場なので、それはありがたいです。ただ、本音としては、私は仕事が好きなので「もっと働きたいなぁ」と思うことはよくあります。

尾森:うん…わかります。一方で、メンタルヘルスへの具体的な対処法については、どんな場面で、誰とお話ししますか?

鈴木:対処法については、心療内科の先生と話しますね。夏休みに入ってすぐのタイミングに通院予定があったのですが、その時は栄養の話をしました。「栄養が足りていないよ。この本読んでごらん。」と栄養学の本をおすすめしてもらって、実践をしています。

基本的には鉄剤と食欲を助けてくれる漢方を処方してもらっています。あくまで個人的な体験談ですが、鉄剤を飲み始めてから、気持ちの大きな落ち込みが和らいでいるのを感じています。

尾森:心身の健康には、色々なアプローチがありますよね。心に直接的に働きかける方法もあれば、栄養も一つのアプローチ。お話を聞いた感じ、お薬の処方だけでなく、鈴木さんや"人間"を全体的に見て、多角的にアプローチを探っていらっしゃることが伝わってきました。他にもらっているアドバイスは何かありますか?

鈴木:やっぱり、休息の取り方も話すときもありますよ。「1ヶ月に1度でもいいから、土日のどこかで子供を預けないと体がもたないよ。」って。

尾森:休息についてもお話するのですね。そういえば、今通われている心療内科に繋がったのにも、いくつか大事な出来事が重なったのでしたよね?

鈴木:そうなんです。勤めている学校にスクールカウンセラーさんがいて、その方が心療内科に繋いでくださったんです。

鈴木さんの旅路(2023年夏〜冬)

尾森:とても大事な連携だなと思っています。元々、スクールカウンセラーさんに相談すること自体は、考えていましたか?

鈴木:うーん。取説ワークのセッションで、自分について人に話す自信を少し持てたなぁと振り返っていて。それがカウンセラーさんに話してみようと思えた理由の一つです。(取説ワークでは、自分の感情や状態の伝え方を練習する場面もある)

あと、前々から、スクールカウンセラーさんに「話を聞いてもらいたいなぁ…」とは思っていたんです。でも、予約が多いみたいで、自分の予約を入れてもらうのは現実的じゃないかも、と躊躇していて。

ところがある日、悲しい出来事があって。同僚の先生に話を聞いてもらっている時に私が少し泣いてしまったんですね。その時話を聞いてくれていた先生が「(カウンセラーさんに)ちょっと話を聞いてもらったら」と背中を押してくれました。

実はその先生はカウンセラーさんとの日程調整もしている方だったので、そのまま予約をとるコミュニケーションが出来ました。それで、カウンセラーさんと話して、地域の心療内科へと繋げてもらう流れになりました。

尾森:スクールカウンセラーさん、心療内科の先生とお話する時間、取説ワークの時間などが相互に作用しあっていたのですね。鈴木さんが必要とする資源に繋がってよかったです。2023年冬にこのご報告を鈴木さんから受けた時、涙がほろりと出るくらいに、私も安堵したのを覚えています!

私の個人的な見解ですが、7つの休息の中でも、身体的な休息以外の休息は、感情疲労に作用するものとしてとても大切だと思っているんです。先生という職業は、体力も必要だと思いますが、感情労働もかなりしているように見えます。なので、その面に作用する休息が取りづらい場合、疲労が溜まっていくのではないかと考察しています。

出典:サンドラ・ダルトン・スミスが提唱する7つの休息を翻訳・一部改変 https://www.drdaltonsmith.com/

鈴木:本当にそうですね。疲れが溜まって、だんだん感情が無になっていくのを感じることがあります。人とのコミュニケーションがうまく取れなくなるんです。だからその面でも、休息は大切だなと思いますね。

尾森:そうですよね。鈴木さんの場合、感情のやり取りができる場所を複数(同僚との関係、心療内科など)持てるようになってきていますよね。とても大切な進捗だと思いますよ。

同じ目線でクリエイティブな時間を過ごせるのが取説ワークの特徴

尾森:最後に、取説ワークについての鈴木さんの見解を聞きたいです。カウンセリングと取説ワークには、どのような違いがあると思いますか?

鈴木:うーん…。どちらにも共通するのは、「どんなことがあったのか」をじっくり話せる(聞いてもらえる)という点かなと思います。
ただ、取説ワークは、2人で一緒に作業をする感覚がよりありますね。ファシリテーター(今回でいえば尾森)の体験とか工夫も共有してもらったので、一緒に同じ目線でクリエイティブに対話が進んでいくような感覚です。

どちらもそれぞれの良さがありますよね。カウンセリングは、「話して、話して、出す」時間のような感じ。カウンセリングとは少し異なるとは思いますが、心療内科の先生と話す時間でもじっくり聞いてもらうことがあります。場合によってはアドバイスもあるので、ほんの少し「対等な目線」という感覚とは違うかなと思っています。

尾森:そうなんですね。取説ワークには同じ目線でクリエイティブな感じを受け取っていらっしゃるんですね。そう感じていらしたんだ、と私にとっても気づきになりました。

インタビューを終えて

今回鈴木さんには、うまくいっていることも、試行錯誤していることも包み隠さずお話しいただき、等身大のインタビューとなりました。

勤務日程が変わり、休息の取り方を再設計する必要が出てきたというお話は、私自身も身に覚えがあるお話でした。そう、一度確立した休息の取り方が、その後もずっと同じように運用できるかというと、そうではないのですよね。休息を実践していくことは、自分への労い時間。もっというと、自分の身の回りの環境に「お手入れ」をしていく作業でもありますね。

また、「本当はもっと働きたい」と思っている鈴木さんの声も貴重なものでした。もちろん、性別によって全てを整理することはできませんが、「自分は今、何にどれくらいエネルギーをかけられるのか?」と、自分自身と相談することが初めの一歩と言えるかもしれません。

鈴木さんの事例から、いくつかの場所に相談できる関係性を持っておく大切さを教えてもらいました。

今、自分の中でぐるぐると考えていっぱいいっぱいになっている方も、よかったらオトナノタマリバの機会をご活用ください。
じぶんの取説ワーク無料相談、座談会などで、お待ちしています。


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