なにもいらない。ぜんぶほしい。
人間って素敵な生き物だ。
醜くて面倒で不可解で。綺麗で単純で愉快だ。
ほんの少し前まであり得ないと思っていた状況をいつの間にか受け入れて心地よいと思う自分がいる。
このままでもいいのかもしれないと。
今まで心の底から楽しかったものが急につまらなく重荷に感じて逃げたくなってしまう自分がいる。
このままでいいはずがないのだと。
人間は変化を求める。
私は変化を楽しみ、喜んでいる。
そして少し悲しくもある。
突然自分を取り巻くものすべて、なにもかも捨ててしまいたくなる。なにもいらないと思ってしまう。
自分のいる環境に慣れてしまったからだろうか。
嫌な部分を見つけてしまったからだろうか。
本当に大切なものを一つだけ抱えて、どこか、誰も知らない遠い場所へ行きたい。
そこでまた何もないところから自分の手で作り上げていく。そんなことを繰り返している。
けれどやっぱり私は欲張りで、あれもこれもと欲しくなる。お金。愛情。美貌。なにかひとつ手に入れたらまた次のもの。ぜんぶほしいと思ってしまう。
欲望は尽きぬものだけれどそれにしても欲張りすぎやしないか。だから変化を求めるのだろうか。
いや。私は本当に大切なものが何かを知っている。
笑顔。私と私に関わるすべての人の。
人の笑顔は、人を幸せにする不思議な力がある。
私はそう信じている。
私程度の語彙力ではとてもうまく言い表せれない。
素敵で不思議な力だ。
いつか表現できるだろうか。
今の私の周りにはその素敵な力が溢れている。
私の選択は間違っていなかった。
これでよかった。
そう思える。
だっていまこんなに笑ってくれる人たちがいる。
それがたまらなくうれしい。
この空間だけでいい。
それ以外はなにもいらない。
けれどこの幸せな記憶は忘れたくない。
ぜんぶほしい。