ぬらり、ゆらり
銀色に輝く煙。
きらきら、とは違う。
ぬらぬらと、けれど怖くはなくて、もっと綺麗で清らかで、不思議な景色だった。
朝、隣で眠る恋人の寝相の悪さに一人で静かに笑っていたら肘で殴られた。
布団は奪われるし、私を床に押しやるし、何度起こしてもまた寝るし。
けれど、私が寝ているときもきっと同じ事をしているだろうから文句は言えない。
無防備で可愛い寝顔に免じて許してやろうと思う。
ゆうべ変な時間に寝てしまっていたせいか、私はなかなか寝付けなくて、携帯を見たり、恋人の寝相を撮ったりしていたらいつの間にか朝になっていた。
ぼうっとしながら煙草を吸っていたら、吐き出した煙がゆらゆらと部屋に広がって、幻想的な模様を描いていることに気付いた。
窓から差し込む光に照らされてぬらぬらと光る。
それは、意思を持った生命体のように見えた。
ゆっくり、くるくると渦を巻いたり、線のように伸びたりしながら薄れていく。
その光景がなんとも美しかった。
ずっと見ていたかった。
いつの間にか煙草は短くなっていて、煙も空気に溶け込んで消えてしまった。
その美しくて儚い煙を写真に収めたかったけれど、私のあの感動は伝わらないだろう。
残念だけれどそれで良かった気もする。
誰にも見せずに内緒にしておきたい。
美しくて儚い瞬間を、私だけが知っている幸せを。
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