おはようからおやすみまで

私もちゃんと女だったのね。

こんなに苦しくて
こんなに嬉しくて
こんなに悲しいなんて
知らなかった。

こんなの初めて。
あなたの返信ひとつで
ニヤけちゃったり、不安になったりして。
逢いたくて仕方がなくって。
あなたが忙しいのも分かってるのに、自分だって忙しいのに、無理やり予定を合わせて。
あなたに会える日は楽しみで仕方がなくって。

会った瞬間に抱きつきたくなって。
でもそんな事はできないから、お互いぎこちないまま面白くもないテレビを見て、別々にシャワーを浴びて、あなたに借りたウエストが緩すぎるスウェットの紐を思いっきり縛って、寒いねって言いながら布団に潜り込むの。

全部私からだった。
ご飯に誘ったのも、触れたのも、会いたいって言うのも。
キスをねだるのも、あなたの首に腕を回すのも、寝るときは背中を向けるあなたに後ろから抱きついて背中に顔を埋めるのも。
好きって言ったのも。

今までは絶対私から誘ったりしなかった。
告白されたから付き合って、求められるから体を重ねて、好きって言われるから好きって言ってた。
それなのに。
あなただけはどうしようもないくらい好きなの。
迷惑じゃないかな。
しつこくないかな。
そんな風に怖くなっても逢いたい気持ちのほうが強くて。
でも家を出るときにお別れのハグをしたり、朝起きたときにおはようのキスをしたり、そういう恋人みたいな事はできない。
だって私はあなたの彼女じゃないから。

好きって言ってくれたのが本当に本当に嬉しかった。
でもその先は?
私たちってなんなの?
そう聞きたいけど聞けるわけがない。
それを聞いてしまったらもう会えないかもしれないから。
都合のいい女だとしても私はあなたが大好きだから。
隣に居たいから今日もまたあなたに連絡する。
でないとこの関係は終わる。
あなたが私を誘うことはないから。
あなたから連絡が来ることはないから。
ちゃんと分かってるから。

おはよう。
おやすみ。
愛してる。
毎日そうやって言えたらいいのに。
愛してるなんて口が裂けても言えないわ。
普段使わない絵文字を使って、あなたに会いたいのってアピールするのが精一杯。
あなたの大きないびきも、意味不明な寝言も、背中を向けて寝ていても私の左手だけは強く握って離さないのも、普段そっけないのにたまにぎゅっと抱きしめてくれるのも、すべてが愛おしくてたまらない。
シャツの襟から覗く入れ墨も、同じフレーズだけをずっと繰り返してる鼻歌も、低くて静かな声も。
こんなに大好きなのよってあなたに直接言えたならどんなにいいことか。
けどそれは叶わないから、あなたの前では素直で可愛らしい馬鹿な女を演じるわ。
いつかあなたの一番になれる日を願って。

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