DVDにて鑑賞。過去の名作がこうして観られるのは助かる。
演目概要
尚、「白浪五人男」は通称で、演目の正式名称(本外題)は「青砥稿花紅彩画」。元々は、河竹黙阿弥が歌川豊国(三代)の錦絵に着想を得て作られた歌舞伎で、立ち廻りや衣装も美しく、「動く錦絵」として評判になったとか。
この"ひとりずつ見得を切る"という点については、wikiにあったこちらの記述が興味深い。
ゴレンジャーどころか、アイドルやジャニーズの自己紹介もここに源流があったのか。五人にはそれぞれモデルがいるそうだが、歌川芳春作のこの画なんかには、ブロマイド感すら出ている。石川五右衛門、鼠小僧と並ぶ日本屈指の盗賊ということで、人気もあったのだろう。
こういった話も面白い。
あらすじや見どころ(補記)
見どころはこちらの記事に、あらすじはこちらの記事にも詳しいが、勢揃いの後の顛末についても一応まとめておく。
捕手に追われた5人は勢揃いして見得を切り(稲瀬川勢揃いの場)、取り囲まれた菊之助は自害(極楽寺大屋根立腹の場)、それを聞いた日本駄右衛門はその死を悼み(極楽寺山門の場)、青砥左衛門藤綱は情をかけて駄右衛門を見逃すことにする(滑川土橋の場)。
この菊之助の自害からがんどう返しで「山門の場」へと続き、さらには山門がせり上がってセリから登場してくる青砥左衛門とが上下に決まるという、大仕掛け・スペクタクルな演出がラストの大きな見どころとなっている。
感想めいたもの
DVDに収録されているのは、昭和61年12月歌舞伎座にて上演されたもので、弁天小僧菊之助に尾上菊五郎(7世)、南郷力丸に尾上辰之助(初世)。
尾上辰之助は昭和62年(1987年)に40歳で早世されたということなので、この公演の翌年にお亡くなりになられている。「白浪五人男」は七五調での名調子のため、自分としては聞きとりにくさはあったが、多少分からなくとも役者の力で押し切られる感じもあり、実に惜しい方を早くに亡くしたものだと感じる。
あと、この演目、全てを演じられることがあまりないようで、このDVD収録のものも「浜松屋」から。この「浜松屋」では、地面師的な詐欺集団による計画の実行から二組の実子の対面が思わず実現するという超展開となり、それを演じる菊五郎の茶目っ気も可笑しいのだが、この親子のその後の顛末を描く「蔵前の場」の後半が端折られていて、結局どうなったのか分からない。恐らくは人情話が展開されることになろう場だが、それよりも口上や活劇を優先するという意味では、アイドル的色彩が濃い演目なのだろう。